「自分さえ快適なら周りがどんなに迷惑を被ってもかまわない」……薪ストーブ利用者さんの中で、こういった極端な考えをお持ちの方はほとんどいないのではないでしょうか。
大半の方にとっては、以下のいずれかではないかと思います。
- 迷惑になっていることに気づいてない(誰にも何も言われない)
- 多少の迷惑をかけている認識はあれど、そこまでとは思っていない(自分の中では常識の範囲)
実際問題、迷惑度合いは利用者さん側にはわからないものです。
複数の人に指摘されればわかりやすいですが、ご近所問題のクレームはそもそも言いづらいもの。迷惑を感じていても、誰も言ってこないこともあるでしょう。
言ってきたとしても、遠回し・控えめに言うので本当の迷惑度合いはなかなか伝わりません。加えて利用者さんが、自分では常識の範囲だと思いこんでいれば尚更でしょう。

うーん、周囲がどれだけ困っているかを利用者さんが真に理解するのは難しいことなんですね。。
本ページでは、薪ストーブ利用で周囲の住民が迷惑・被害を感じる可能性があることをまとめてみました。
実際問題、知識としてはすでにご存じのことがほとんどだと思います。しかし一度思い込みを捨てていただき、ニュートラルな視点で「自分の場合はどうか」と考えるきっかけになれば幸いです。
煙・臭いに関する問題

薪ストーブ関連で最も迷惑になりやすいことに、煙・臭い問題が挙げられます。全ての各種問題も、元をたどれば煙・臭いに起因する、ということもあるくらい重要な要素です。
正しく使っていれば主に臭うのは焚きつけ時・薪の追加時ですが、それ以外でも決して無臭という訳ではありません。うまく使えていない場合は言わずもがなです。
煙・臭いに対する許容は人によって違いがあります。多様な住民がいる住宅街で利用するならば、自身の常識だけに留まらない配慮が必要になるでしょう。
室内への煙・臭いの流入
発生した煙は、大気拡散が不十分な状態で生活エリアまで降りてきてしまうこともめずらしくありません。そうなってしまうと屋外は悪臭に包まれます。
さらには給気口や隙間(窓やコンセント・スイッチ部分等)から、室内へ煙と臭いが流入。結果、付近の住民は室内にいても迷惑を感じることになります。
特に不完全燃焼時の煙は濃度が強く、家中が強烈な臭いに包まれることがあります。
そして室内に流入した臭いは数時間もの間残ることも問題です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
煙・臭いは強制的に張り込んできて防げないこと。そしていつ不完全燃焼クラスの強い臭いがやってくるか分からないこと。こういったことに迷惑を感じている可能性があります。

家は煙は上がっているからうちは大丈夫!
という方は、以下のページをご覧ください。見える煙はわずかなので、上がって見えている=臭わないわけではありません。煙は冷やされ上昇する力は失われ、その後は拡散しながら地表にも降りてきます。
健康被害
薪ストーブの煙には、PM2.5や煤じんなどが含まれます。wikipediaによると、精製された石油燃料を使う石油暖房機器と比べてそれらは350倍近く多いそうです。
PM2.5はとても小さいので、肺の奥にまで入り込みます。WHOもPM2.5が肺がん発祥のリスクになると発表済み。他にも喘息や気管支炎などのリスクを高めるというのが定説です。
怖いと思ったのは、臭いはいつもと変わらないと言うこと。20の方が臭いときもあります。ちなみに通常時のPM2.5は5以下、環境基準は1時間平均35。上手く使ってる方でも時にこうなることにぞっとします。 pic.twitter.com/aiEJLpwDpy
— ヤマダ (@jumaki_info) February 28, 2022
健康被害の可能性はそれだけではありません。不完全燃焼に近い煙になると、以下のような有害な物質が含まれます。
- 揮発性有機化合物(VOC)
- 多環芳香族炭化水素(PAH)
- 一酸化炭素(CO)
これらは発がん性があったり、多量に摂取すると中毒をおこしたりすることもあります。
少なくとも、薪ストーブの煙で健康に悪いことはあれど、良いことは無いのは間違いないことです。
特に喘息などの気管支系の病気に罹っている人にとっては、薪ストーブの煙でとても辛い思いをしているかもしれません。また、小さい子供ほど影響が強いデータがあるため、赤ちゃんや子供がいる家庭では心理的にも心配になるでしょう。
臭いで眠れない・起こされる
寝室にも煙は容赦なく入り込んでくるため、不快な臭いで寝付けないこともあります。不快=イライラはアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されるので、余計眠れなくなるという悪循環。
また、寝ている時に煙が入り込んでくれば、誰でもびっくりして飛び起きるものです。煙で目が覚めること。これがどんなに不快な寝覚めになるかは体験しないと分からないことだと思います。
配慮ある利用者さんほど、薪ストーブは夜間や早朝に焚き付けを行っていることでしょう。しかしそれが原因で、やっと寝付けたと思ったら起こされてしまったり、予定よりも大分早く起こされてしまったりしているかもしれないのです。
夜間・早朝に焚き付けをすることに関しては、以下の記事をご覧ください。
洗濯物に臭いが付いて洗い直しになる
洗濯物を外に干していれば、薪ストーブの煙は容易にこびりつきます。一番きれいになったそばから臭いが付いてしまうのです。
洗濯物を入れて、洗剤を入れ、スイッチを回し、40分程度待つ。そして洗濯物を干す。待っている時間が多いですが、大体1時間はかけて洗濯物を干します。
その行程全てが台無しになったらどう感じるでしょうか。言わずもがなですよね。
これを防ぐためには、周囲に洗濯が干されるような昼間に薪ストーブを利用しないこと。それが無理ならせめて焚き付けを行わないことです。

焚き付け時でなくても臭いは全くのゼロではないため、気になる人は一定数いると思います。
行動が制限される
薪ストーブの煙・臭いが強い地域だと、周辺住民は様々な行動が制限されます。
- 干したい時に洗濯物が干せない
- 自由に庭に出られない
- 自由に子供を外で遊ばせられない
- 換気ができない・窓を開けられない
自分の家なのですから、自由に生活したいのは当然のこと。他人の影響で制約ができることに迷惑を感じている人がいるかもしれません。
煤じん・火の粉に関する問題
薪ストーブの燃料は薪ですから、煤じんの発生は避けられません。煤じん=燃焼の結果発生する、すすや灰などの微粒子です。
また、利用方法によっては火の粉が飛ぶこともあります。
他人の敷地内で発生することなので、利用者さんには気がつきにくいことかもしれません。ですがこれらも普通に起こりえることです。
給気口フィルターが黒くなる

PM2.5対応の給気口フィルターを設置していると、煤じんの影響により短期間で黒くなります。
他の野焼きの原因などもあるので全て薪ストーブが原因ではありませんが、黒ずみやすいことは間違いありません。
給気口フィルターが黒くなること自体は洗ったり変えたりすれば良いですが、健康面や心理的な影響も大きいでしょう。
私も、給気口フィルターを清掃するたびに「こんなところで生活しているのか……」と感じています。
家の周辺が汚れる

煙突トップの位置が悪く、隣家の壁などに直接煙があたる位置にあれば、それらを汚すことがあります。
そんな設計は普通はないでしょう……と思いきや、平屋の薪ストーブの場合は注意が必要です。
直接煙があたるものがなくても、周辺のお宅のベランダやウッドデッキ、室外側のサッシ・網戸らへんが煤じんで汚れることがあります。
煤じんの粒子の大きさには大小あるようで、大きなものは黒点のようにも見えます。

ベランダの手すりもすこし放っておいてから拭くと、真っ黒になります。給気口フィルターと同様、掃除する度にこの環境に気づかされます。
火災が恐い
モクモクと大量の煙が上がり、時には火の粉などが降ってくることもあるようです。そうなると恐いのが火災(火事)です。
- 煙道火災(煙突の火災)
- 火の粉による火災(もらい火)
ニュースを見ていると、薪ストーブに起因する火災を目にすることたまにあります。可能性は高くないにしても、ゼロではありません。
特に使い方が上手ではない場合は、煙道火災や火の粉は発生しやすいので恐いものです。
ちなみに、もらい火による火災は火災保険の対象とならないことがあります。失火責任法があるので、重大な過失による場合を除き賠償請求もできません。
薪に関する問題

薪ストーブを利用するのに欠かせないのが、燃料となる薪です。薪は薪ストーブ庫内に入る程度に小さくした状態で使いますが、加工の際の音や保管に際し、周辺住民が迷惑していることがあります。
チェーンソー・薪割り機の利用音

玉切りのためのチェーンソーや、薪割りの為の薪割り機は当然音がします。特に音量が大きいのはエンジン式のタイプです。
エンジン式は凄まじい音がするので、住宅街ではNGと言いきっても過言ではないかもしれません。排煙の問題もありますしね。
なら電動式なら良いか……と言えば、一概にそうとも言えません。少なくとも静かではありませんので、住宅同士が近ければ、迷惑に感じる人は多いはずです。
現実的には、使う時間や時間帯も関係があります。早朝・夜に使ったり、日中何時間も切っていれば常識の範囲外(=迷惑)と思う人が増えるでしょう。

個人的には、臭いの原因が薪ストーブだと知った後から、チェーンソーも気になる用になりました。煙・臭いとも連動して許容は変わるもののようです。
斧による薪割りの音&振動
薪割りの音も、割るための強い力が必要な分、比較的大きな音が発生します。ドン・ガン・パキャ・カラン等など。
加えて住宅密集地特有のものとして、振動(ショック)が迷惑になることもあります。むしろこちらの方が迷惑度合いは高いかもしれません。
住宅街では、コンクリート・アスファルトで外構を固めている場合がほとんど。道路も含め、固い素材の地続きに薪割り場があれば、割る度に振動が伝わることもあるというわけです。
音と振動のコンボがあれば、おちおち昼寝もできません。寝かしつけている赤ちゃんが起きてしまうなど、知らないうちに迷惑をかけてしまう場合があります。
薪を積む音
薪を雑に扱えば、薪どうしがぶつかりあって音が発生します。こちらも家同士が近いと結構気に鳴る音になりえます。
薪の虫・カビ

薪の原料は自然の木になるため、どうしても虫が発生してしまいます。ゴキブリ・ゲジゲジ・カメムシ・カミキリ虫等など。いわゆる不快害虫というやつですね。
特にシロアリが集まってしまったり、蜂の巣ができてしまったりすると、不快どころか実害にもなりかねません。
特に蜂は毎年時期になるとところどころに巣をつくるので注意が必要です。
加えて薪にはカビが発生することがあります。住宅街では境界線間際におかれると、誰も良い気持ちはしないのではないでしょうか。

カビの胞子はご存じの通り風で飛散します。それが有害なのはもちろんのこと、カビカビの黒い薪は燃えが良くなさそう&心理的になんだかなと思います。
放火の不安
冬場は空気が乾燥するため、火災の発生が増えます。放火もありますので、基本的には燃えそうなものを置かないことが予防には大事です。……どうみても薪棚は格好の標的になりそうですよね(汗)。つまりは放火の不安があります。
ちなみに、放火でのもらい火による火災は、放火の加害者に損害賠償請求できるようです。
しかし加害者が見つからなかったり、支払い能力を持っていなかったりすれば支払ってもらえないことも。その場合は自分の火災保険と相談……ということになるようです。
いずれにしても放火のもらい火は勘弁……と思うのは通常です。
まとめ
以上、薪ストーブで周辺住民が迷惑になる可能性があるものを考えつくだけ挙げてみました。……と言っても薪ストーブ密集地に住む私としては、実際ほとんど体験していますので、それほど難しいことではありませんでしたが(汗)。
やはり私の環境のように、家同士が非常に近い住宅密集地では、予想以上に迷惑になることがあるのでしょう。
誰からも何も言われていない=迷惑をかけていない訳ではありません。
これを機会に「うちは何も言われていないけれど、大丈夫かな」「注意してみようかな」「迷惑を感じてないか声を掛けてみようかな」等と、お考えいただくきっかけになれば幸いです。
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