薪ストーブは、焚きつけ時に比較的多くの煙が出ます。つけはじめは庫内の温度が低く、完全燃焼させることができないからです。
二次燃焼できる温度に達し、煙がほぼ見えなくなるまでにかかる時間は、様々な要因があれど約20~30分前後でしょうか。つまりはその間、周囲のお宅が臭いを感じやすいことを意味します。
この焚きつけ20~30分に対する利用者さんの考え方は、人それぞれかもしれません。

20~30分くらいなら住宅街でも常識の範囲かな。何も言われないので迷惑は掛けてないと思います。

20~30分とはいえ、日中に煙を出すのは気になるので早朝や夜に焚きつけるようにしています。
とは言え実際のところ、焚きつけ時の煙を周囲がどう感じているか、なかなか分からないのではないでしょうか。
薪ストーブの煙は100M以上流れることもありますが、一軒一軒聞いて回るわけにもいきません。それにご近所関係もありますし、面と向かって正直に言ってもらえないこともありますしね。
そこで本ページでは、薪ストーブ密集地で生活する私が、焚きつけ20~30分についての思うところを本音で書きたいと思います。できるだけ客観的&冷静に書くことを念頭に置いていますので、利用者さんの参考にしていただければ幸いです。

我が家の窓からは煙突が何本も見えるので分かりますが、上手い家と下手な家とでは焚きつけ(煙の出ている時間)が全くというほど違います。
焚きつけ時の概要

まずはこの焚きつけ20~30分についての概要を、私の実例&体感をベースにご紹介していきます。基本的なことなのでご存じの方も多いと思いますが、まずはお付き合いください。
私の環境は薪ストーブ密集地のため、遠方からも結構臭ってきます。しかし最も臭う&影響力があるのはやはり最寄りのお宅。ここではそのお宅を対象にして書きたいと思います。
ちなみにそのお宅は、当初かなり下手だったのが、今ではまあ常識的なレベル(?)にはなっていると思います。使用頻度はシーズン中毎日です。
焚き付け時の20~30分の臭いの強さ・頻度
焚き付け時の20~30分間、目に見える煙が出ており、程度に幅はありますが特有の臭いが付近を包むこともあります。
「こともある」との通り、煙が出ていても必ず臭うわけではありません。ドラフトの強さやその日の風向き等で、以下のように日によって臭いの度合いは異なります。
- 全く臭わない(煙は目視で確認できていても)
- 軽く臭う(薪ストーブだと区別できる程度)
- 普通に臭う(不快)
- とても強く臭う(かなり不快)
とは言っても内訳は2~3が多く、1と4は少ないです。季節的に、風向きにある程度傾向があることが理由でしょうか。冬場の北風ベースで、大抵は我が家が風下になります。
我が家が臭わない日は、代わりに他のお宅が臭っているのかもしれません。しかしそう頻度は多くないので、我が家以外はどう感じているかは不明です。
なので「お宅以外は言ってこないからお宅が神経質なんだ!」と言われてしまうと悲しいですね。

でも煙が上がっていれば臭わないでしょ!?
という方もいるかもしれませんが、上がっていても臭いはあります。というのも見える煙はごく一部。実際は見えなくなってから煙が降りてくることも普通にあるからです。この辺りをご存じない方は、以下のページをご参照ください。
屋外は比較的強めの臭い
薪ストーブの煙・臭いは熱気で上昇した後、冷えて上昇気流が失われながら大気拡散します。煙・臭いが充分に拡散しない状態のまま生活エリアまで降りてきてしまうと、人が臭気として感じます。
煙がある程度拡散された状態であれば、臭いは軽めの野焼き程度。しかし拡散されずに濃度が高い煙の場合は、外にはいられないくらいの強い臭いにもなります。
特に屋外は煙を直に吸い込むので、後述する室内よりも、比較的強めの臭いがするのが特徴です。

臭いが強いときに無理して外にいると、髪や服が昔のパチンコ屋や焼き肉屋に行った後のような状況になります。人間燻製状態です(汗)
室内には給気口などから臭いが流入する

室内にいれば、窓を開けない限り臭いはないですよね?
屋外がだめなら室内にいれば良いのか……と言えばそうでもありません。室内にいても焚き付けの臭いはよくわかります。もちろん窓を開けていなくても、です。

私の場合は現在設置が義務づけられている24時間換気の影響によるもの。強制的に換気されるため、給気口から外気と共に煙が勢いよく入り込んでくるのです。
余談ですが、24時間換気や給気口が無かったとしても、サッシなどの気密性の低い場所から煙が入り込みます。我が家も給気口を一時的に閉じたり、強い不完全燃焼を起こしたりしている場合はそれらの隙間から臭いを感じとれます。
特に引き違い窓・掃き出し窓は隙間が多く、煙が入りやすいようですね。
残念なことに、室内への煙の流入を完璧に防ぐことはできません。できることと言えば、給気口フィルターを設置したり、空気清浄機を導入したりなどの緩和策くらい。つまり煙・臭いは強制です。
臭いを感じるのは実際は20~30分だけではない


焚き付けの20~30分位なら我慢していただけないものでしょうか。
このように思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。短い時間なら……、と考えるお気持ちは分かります。
しかしながら、実は焚き付けの時間=近隣が臭いを感じる時間ではありません。20~30分で外の煙がおさまったとしても、室内に入った煙は当分残ります。
つまり20~30分よりもより長い時間、臭いを感じているのです。大変気づきにくいことなので、ここではその点についてご説明します。
換気で空気が入れ替わるのは1時間で半分~
20~30分よりも長い時間臭いが残る理由は、室内の換気には時間がかかるからです。
換気は「自然換気」と「機械換気」に分けられますが、いずれも一瞬でできるものではありません。つまりは換気にかかる時間だけ、臭いが長引くことに影響してしまうのです。
換気にかかる時間に関してはお宅により様々。とは言え現在は建築基準法により、1時間で最低半分以上の空気が入れ替わることが定められています。
空気の入れ替わる量 | |
---|---|
30分 | 1/4 |
1時間 | 半分 |
2時間 | 全て |
逆に言えばこの場合、1時間かけても室内の煙・臭いは半分しか減らないわけです。家の中でタバコを吸ったらなかなか臭いが消えないことを考えると、イメージしやすいかもしれません。
我が家の場合だと、空気清浄機がない部屋では焚きつけ中はもちろんのこと、終わってからも30分~1時間以上は臭いが残ります。つまりは最初の20~30分の臭い+30分以上。合計約1時間~1時間30分以上臭いが抜けないことになります。
家の作りによっては、もっと長時間室内に臭いが残ってしまうこともあるでしょう。臭いは焚き付けの時間20~30分だけではないこと。この事実を知っていただければ幸いです。

これは実際に体験しないと分からないので利用者さんには気づきにくいことかもしれません。焚きつけ時の煙は比較的強いので、どうしてもすぐにはなくなってくれないのです。
24時間換気の家なら換気の強弱でも変わる体感
先ほど、換気は最低でも1時間で半分以上の空気が入れ替わると書きました。つまりは「最低」ですので、換気能力がより高い家もあるわけです。
ちなみに我が家がそれで、24時間換気は比較的高機能だと思います。排気ファンが6個もついており、給気口から入ってくる風量もちょっと寒いくらい。結構な給気量があります。
となると、換気の強弱でも体感する煙と臭いが変わってくるのが道理です。以下の表は、極端な例です。
換気強 | 換気弱 | |
---|---|---|
室外からの煙 | たくさん入る | ほどほどに入る |
室内の煙 | たくさん出やすい | ほどほどに出やすい(1時間で半分) |
体感 | 短時間で臭いが充満するので体感として気づきやすい。 | 換気強よりは体感的に穏やかになる |
我が家の場合は換気が強いので、「あ、薪ストーブついたな」ということが明確に分かります。
抜けるのも早そうに思うところですが、入ってくる煙の量も多いのでさして早いとは感じません。強めの臭いなら先ほどのとおり余裕で1時間以上臭い続けます(実際は空気清浄機を強にして短縮させています)。
また、換気が強いことに関連することで一つ余談を。
焚きつけで迷惑をかけないように早朝や夜に使う方もいらっしゃると思います。大変心優しいお気遣いだと私も思います。なのですが、寝ているところを火事かと思って飛び起きたのも一度や二度ではありません。

早朝や夜に使えば万事OKではなく、住宅街で使うには臭い自体を抑えることが肝要なのだと思います。
自然換気の家なら少ない煙でもっと臭う可能性も
ここまでは24時間換気を前提で書いてきました。
24時間換気がついている住宅の場合、給気口フィルターが付けられることがあります。例えばPM2.5に対応したフィルターを通した室内の煙は、臭いが低減されます。体感で2~3割くらいでしょうか。
しかし自然換気の家の場合、サッシなどの気密性が低いところからフィルターを通さず直に煙が入り込んできます。こうなると、ちょっとの流入でもとても臭います。
しかも給気口が無い=24時間換気も無いため、一度入った煙はなかなか室外に出ていきません。特に古いお宅の場合は給気口が無い&隙間が大きい家も多いと思いますので、予想以上に困っている人もいるかもしれません。
臭いの強さについて

焚き付けの時間だけではなく、臭いの強さ(濃さ)も近隣住民にとって重要な要素です。私もそうですが、むしろ臭いの強さの方が気になる人もいるほど。ここではその点について詳しく見てみたいと思います。
臭いの強さの分類
本ページの上の方で挙げた臭いの強さを再掲してみます。
- 全く臭わない
- 軽く臭う
- 普通に臭う
- とても強く臭う
体感する臭いの強さは、「発生した煙」と「拡散の度合い」により決まります。発生した煙を100として、半分に拡散した状態で地表に降りれば50になるという具合です。
1の全く臭わないが理想ですが、木を燃やす以上、臭いの発生をゼロにはできません。拡散が甘ければ多少は臭うことは、薪ストーブの性質上避けられないと考えられます。
つまりWith薪ストーブ時代の昨今では、2の「軽く臭う」くらいは許容すべきことと言えるのかもしれません。これについては正解はありませんので、個人の考えによるとは思いますけれど。
住宅地では「3.普通に臭う」以上は厳しいかも
山奥ならどんな使い方をしても文句は言われません。4の「とても強く臭う」でも誰にも言われないのです(環境問題としてどうかとは思いますけれど)。
しかし住宅地には、たくさんの人が住んでいます。したがって3の「普通に臭う」くらいになると20~30分でも気になる人は増えそう。つまりはトラブルになる確率は上がりそうです。
実際には、臭いに関する個人の許容値には違いがあります。たくさんの人が住む=様々な許容値を持つ人が住むということ。つまりは2の「軽く臭う」でもトラブルになる可能性は無くなりません。

住宅街の薪ストーブは難しいと言われる所以はこれでしょう。
焚き付け時の煙についての個人的感想

20~30分の焚き付けが、どれくらいの煙・臭いとして感じるかをご理解いただけたと思います。ここまでは私の例などにも触れつつ、一般論として書いてきました。
ここではそれに対して、私個人がどう思っているかを書きたいと思います。あくまで「個人の感想」であり、全ての方が同じく思うわけではないことはご了承ください。
煙が出ている時間ではなく、強さの方が大事
焚きつけ時間をできるだけ短くしようと努力してくださる優良な利用者さんも多いと思います。我が家の場合も、当初は確実に30分以上はかかっていたのですが、努力していただき、多少短くなりました。
もちろんそれはとてもありがたいです。本当に本当に気持ち的にはありがたい……のですが、実際は40分が30分になってもあまり変わりません。
先ほどのとおり煙は室内に当分残るので、例えば合計70分臭うのが60分になる程度。10分の短縮よりも、臭いの強さが弱いことの方が超絶嬉しいです。

強い臭いの焚きつけ20分よりも、弱い臭いで40分の方が気になりません。ガンガンにドラフトしてもらって、もっと拡散してから煙が降りてくれればなぁと思います。
……現実的には、焚き付けが遅い=下手=臭いも強くなってしまうとは思いますが。。
たまにでも強い臭いがくると暴力的
軽い臭いであれば、住宅街での薪ストーブ利用も時代の流れだと私は思っています。ですがたまにやってくる強い臭いにはびっくりしますし、部屋中煙だらけになるので非常に残念に思っています。
これを例えるなら、いつもは普通だけど、月に2~3回DVしてくる配偶者のようなもの。毎日ではなくともいつDVされるか分からない相手とは一生一緒にはいられないですよね。。
同様に、強い臭いは暴力と同じようなものです。頻度は低かったとしてもても、たまにそういった事態になるとつらいですし、いつ来るかも分からないので日々身構えてしまいます。
強い臭いが来る度、一生この地に住んで耐えなければならないのかと思うとげんなり。それと同時に、薪ストーブ利用に対して寛容にしたいという心が折れてしまいます(聖人ではないのですみません)。

これまで散々お願いしてここまで改善してきているので、これ以上言うと関係が悪化しそうなので言いあぐねています(汗)
仕方のないもの、とは思わないでもらえれば
焚き付け20~30分に煙が出るのは仕方がないかもしれません。しかし、「仕方のないもの」「どうしようもないもの」としてしまえばその時点で改善がなくなります。
住宅地での薪ストーブ利用は、山奥で使用するのとは全く訳が違います。たくさんの人が近くに住んでいるわけですので、そこで利用するならば「仕方ない」ではなく、常により良く使う努力をしていただければありがたいものです。
臭いが減ればクレームも減り、利用者さんにとってもメリットがあるのではないでしょうか。
焚き付けの時間は配慮してほしい
洗濯物を干している際に焚きつけが始まると、例え煙の濃度が低くても(高いのは言わずもがな)洗濯物に臭いがついてしまいます。濡れているので臭いの微粒子も付きやすい状態なのでしょう。
これは“薪ストーブあるある”で、twitterを見ると多くの方が経験されているようですね。
そういったことを理解されている方はいて、私の近所でも昼間は使わない利用者さんがいます(加えて言うと、そういった意識が高い人は煙突先を見る限り使い方もうまい気がします)。
そこまででなくとも、せめて晴天だったり、雨続きの合間だったり等で、周囲が洗濯をしているような日。つまり洗濯物が干されていそうな日中は、焚き付けをしないなど配慮していただけると助かるなと思います。
まとめ
煙が多く出るのは20~30分だけですが、実質1時間以上もの間、近隣のお宅にて臭いを感じていることがあります。下手な人はその倍はモクモクさせているので、換気の性能と合わせると、1~2時間以上になることもあるかもしれません。
それに加えて、臭いの強さにより近隣の体感は変わってきます。
いずれにしても薪ストーブは周囲に多少の影響が出る暖房器具です。特に住宅街では慎重に使う努力が必要になりそうです。
「これくらいの煙ならお互い様」と言えるような程度の煙であれば、住宅街での利用も比較的許容されやすくなる。ひいては利用者さんの利益にもなるはずです。
煙を抑えるのは大変だとは思いますが、それができるのは他でもない利用者さんだけです。より良い住環境のために努力していただければ幸いです。
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