薪ストーブの煙はどのように発生してどこに消える?知っておきたい煙と臭いの行方

※当サイトは、アフィリエイト広告を掲載し収益を得て運営しています。
薪ストーブの煙の行方 煙と臭いの基礎知識(薪ストーブ共通情報)

辺りがしょっちゅう臭っていた原因が、薪ストーブの煙だと分かったときは晴天の霹靂でした。だって屋根より高い煙突も付いていますし、煙は上に昇って消えていくと思っていたからです。

ヤマダ
ヤマダ

そもそも煙がどうなるのかなんて、改めて考えたことすらありませんでしたが。

我が家の窓からは、薪ストーブの煙突が何本も見えます。煙を観測するには好立地(!?)なので、臭くなるたびいろいろな家の煙突と煙の流れを見ていましたが、実に様々なケースが見受けられました。興味が湧いたので、さらには煙の「大気拡散」についても調べてみました。

結果、薪ストーブの煙の流れを理解したつもりです。私は煙の専門家ではありませんが、私が学んだ煙の行方を分かりやすくご紹介したいと思います。

煙の発生

STEP01 煙の発生

まずはスタートラインである煙の発生から見ていきましょう。

薪ストーブ庫内で煙が発生

当たり前のことですが、薪ストーブなので薪を燃やすことにより煙が発生します。通常の薪だけでは火が付きづらいので、市販の着火剤や割り箸・小枝などを利用して火を付け、あとは薪と酸素だけで燃焼させます。

特に焚きつけ時等、庫内の温度が低い状態の時には、濃く臭いの強い煙が多く発生します。しかし庫内の温度が上がってくると、きちんとした薪ストーブでは二次燃焼できる機能が働きます(安物は除く)。

二次燃焼とは、薪を燃やして出た煙をさらに燃やして有害物質を減らす機能。つまり温度が上がって二次燃焼が機能すれば煙は非常に少なくなります。

二次燃焼する・しないに関わらず、薪ストーブ庫内で発生した煙は最終的に煙突の入口(根本)にたどり着きます。

煙の量や臭いの強さはこの時点で決まる

煙が煙突の入口にたどり着いた段階で、煙や臭いの強さはもう決まっています。業務用は別として個人宅では脱臭装置・フィルターなどはついておらず、あとは外に向かって流れるだけでなので当然ですよね。

完全燃焼に近づくほど、煙は透明に近く臭いも少ない。これが最も良い煙です。

対して不完全燃焼になると、強烈な臭いと色がついた煙が大量に発生します。これが最も悪い煙で、臭いだけでなく人体にも有害な物質が多く含まれます。

煙の出方は以下のような要素が影響します。ここでは詳しくは書きませんが、他のページでもいろいろ触れていますので参考にしてください。

  • 燃やしている薪の種類(薪以外は論外)
  • 薪の乾燥度合い
  • 薪の量・太さ
  • 薪の詰め込み方・組み方
  • 薪ストーブ内の空気量
  • 薪ストーブ内の温度
  • 薪ストーブの性能

煙突内を移動

STEP02 煙突内を移動

続いて煙は薪ストーブ庫内から煙突に移動します。この煙突の入口から、出口(排出口)に向かって流れていくわけですね。

この部分の煙の流れに影響する要素として「ドラフト」があります。ここでのドラフトとは煙が上昇する力のことであり、煙突から出た後の煙の流れにも影響を与えます。

ドラフトにより煙突内に沿って進む

煙突は一本道ですので、煙は煙突の形状(煙道)に沿って進んでいきます。

上に向かって設置されているためすんなり上昇する……ともいかないのが薪ストーブ。時には真横や斜めに曲がっているカ所を通りながらも煙突内を移動していきます。

何となくでも想像がつくとおり、横や斜めに引かれた煙突部分は煙も進みづらいもの。まっすぐ上に引かれた煙突が最も進みやすく、強いドラフトを生み出します。

ドラフトの強さは、以下のような要素が影響します。

  • 薪ストーブ庫内の温度
  • 煙突の断熱性
  • 煙突の高さ
  • 煙突の形状
  • 煙突径の太さ
  • 煙突内部の汚れ具合
  • 室内の負圧

ドラフトに関しては以下のページも参考になさってください。

最終的に上昇しながら排出口まで移動する

途中、横や斜めのカ所があったとしても、煙突の終わりに近づくと通常は真上に向きます。

煙突の終わり部分には「煙突トップ」と呼ばれるパーツがあり、ここに煙の排出口があります。つまりここが煙突の出口になるというわけですね。

この排出口に到着した時点のドラフトの強弱によって、以降の煙の流れに大きく影響を与えることがあります。ドラフトは上昇気流ですので、強いほど上に向かう力が働き、弱いと上に向かう力がわずかしかなくなります。

煙突から排出し周囲に流れる

STEP03 排出して周囲に流れる

ここまで説明した煙の流れは、煙の濃度やドラフトに違いはあれど一本道です。つまり常に同じ道を通ります。

違いが出てくるのは煙突の排出口から煙が排出された後。ここからの煙の流れは大きく異なってくることがあります。影響するのは以下です。

  • ドラフトの強さ
  • 煙突の位置・形状等
  • 屋根の形状
  • その日の風の強さ&風向き
  • 近隣の地形
  • 近隣の建物

様々な要因があり、日によっても変わる要素もあります。そのため煙の流れを細かく挙げれば切りがありません。そのため代表的な流れに絞って見ていきましょう。

煙の基本的な流れ方

煙の基本的な流れ方

A~D、つまり上がる煙から下がる煙までを図で表しました。

  • Aはほぼ無風で上昇している時の煙
  • Bは多少の風がある時の煙
  • Cは強めの風に煽られている時の煙
  • Dは下降する気流に飲まれている時の煙

私がよく見るのは……実はA~D全部です。家によってA~Bが多い家、B~Dが多い家とばらつきはありますが。

というのも先ほど挙げた煙の流れに影響する要因の内、日によって大きく変わるのはその日の風に起因するものくらいだからでしょう。薪や使い方は毎日ほぼ同じですしね。

さらに言えば、A~Dは固定ではありません。風向きや気流が乱れやすい日・環境なら、短時間でB・C・Dところころ変わるケースも目撃済みです。上下だけでは無く、横向きにも変化することはあります。

気になる臭いに関しては、実はA~D全て地表で臭いとして感じる可能性があります。

煙突背後の気流の影響で煙が下がることがあり、この現象をダウンウォッシュと呼びます。

臭いとして影響してしまう要素

A・Bなら臭わないですよね!?

C・Dはいかにも煙が降りて臭いそうですが、A・Bはそうでもなさそうに思います。しかしA・Bも以下の影響により、臭いに繋がる可能性は普通にあります。

  1. ドラフトの強さと大気拡散
  2. 風や気流

まずは1ですが、ドラフトが強いほど、より上空の高い位置で煙が大気拡散されるので臭いづらくなります。極端に示した図が以下です。

ドラフトの強弱による煙の違い

同様の理由により、煙突自体の高さも影響します。焼却施設の煙突が高く設置されているのも高い位置で拡散させるためです。

2の風と気流は、読んで字のごとくです。薪ストーブの煙は見えなくなってからも当分は煙の成分が濃い(臭い)状態です。

この状態で風や空気の流れに沿って移動し、煙が他のお宅に流れていくことがあります。これに関しては長くなるので事項でより詳しく説明していきます。

煙を可視化して大局の流れを見る

STEP 04 煙を可視化して大局の流れを見る

薪ストーブの煙は、数秒で消えてしまい目では見えなくなります。先ほどの煙のイメージ図は、目視で確認できる程度の流れしか表現されていませんでした。

あくまでこんな向きで流れるということは分かりますが、全くもって実用的ではありません。目に見えなくなってからも煙は流れています。その中には様々な微粒子もありますし、当然臭いもしますからね。

そこでここでは、見えなくなった後の煙を可視化して考えてみたいと思います。

煙と臭いは学術上は違うのかもしれませんが、実質を考慮して同じものとして扱います。

ケース1:上に流れる

まずは先ほど最も煙が上がっていたAを、大気拡散も考慮に入れてシミュレーションしてみましょう。改めて大気拡散とは、周辺の大気と混じり合い、(ここでは煙が)拡散・希釈していくことを言います。

煙が上に流れる場合

灰色の範囲が人間が臭いとして感知できるレベルだと仮定します。上記図内にも書いたとおり、この範囲はドラフトの強さ・煙の濃度・風・気流等により大きく変わります。

さらに言えば、気圧・気温・湿度・重力などあらゆる影響を受けていることでしょう。

灰色部分(拡散部分)は無風・無気流を想定して正円を描いていますが、実際には風や気流等が全くないことは考えられません。なのでこうなることはないでしょうが、あくまで説明用の参考として作りました。

実際にはこの範囲は、先ほどの条件次第で非常に複雑な形状になるはず。つまりは煙が上昇していれば絶対に臭わないとは言えないわけですね。

ヤマダ
ヤマダ

実際私もAを見ますが、臭わないわけではありません。昇って見えなくなるので、使用者は問題無いと思うんでしょうね。

ケース2:斜め上に流れる

次に、斜めに登っていったBで見てみたいと思います。個人的にはBは最もよく見る煙の流れですね。

煙が斜め上に流れる場合

当然ですが、より横向きに移動することになりますので、B’側に大気拡散することになります。したがってAよりも臭いやすくなると考えられます。

冬は無風であることは少なく、冷たい北風がビュービューと吹くのはめずらしくありません。大抵は同じ方向(主に南側?)に流れていくので、特定のお宅が臭いやすくなります。

ヤマダ
ヤマダ

我が家の場合、このくらいで煙がくれば必ず強めに臭うレベルです。次項の建物付近の気流の流れも発生していると考えられます。

ケース3:斜め上に流れてその後下向きの気流が発生した場合

さらにはBで下向きの気流が発生したことを想定してみましょう。

斜め上に流れてその後下向きの気流が発生した場合

建物の周り、特に屋根周辺は気流が発生しやすい場所です。その気流に影響を受けることにより、下に巻き込まれるような煙の流れが発生することがあります。

建物後ろの気流の影響で下がる現象をダウンドラフトと呼ばれます。

屋根付近に気流や風圧が発生することは、薪ストーブユーザーさんなら「風圧帯」という言葉でご存じですよね。

見て分かるとおり、こうなるとB’はかなり臭います。給気口から家中に強烈な臭いが充満するほど。しかし煙自体は上がっていきながらすぐ見えなくなるだけなので、利用者側も気づきにくいんですね。

これにより、Aは全く問題無いと思っているけれどもB’は殺意を覚えるほど臭っている……ということもあるのです。「煙は上がっているはず。B’が神経質なんだ!」と決めつける前に、こういうことがあることを利用者は知っておく必要がありそうです。

ヤマダ
ヤマダ

利用者側から、臭ってないか声がけするのも重要だと思います。

最終的な煙の行方

STEP 05 最終的な煙の行方

ここまでで、大気拡散しながら流れる煙と臭いについて考えてみました。ここでは大気拡散の課程や、臭いへの影響、最終的に煙がどうなるか等を考えてみたいと思います。

さらに大気拡散が進む

煙は煙突から出た後、ひたすら大気拡散が進みます。その課程で、煙の濃度はどんどん薄くなりながら広範囲に広がっていきます(何度も書いてますがその範囲は多くの変数により変わる)。

例えば煙突から出た煙を大気1立方メートルあたり100だとしましょう。煙を構成する様々な微粒子も限りなく拡散・希釈され減少し、やがて半分になり、最終的にはほぼ0に近づいていくと考えられます。

もちろん臭いも濃度の減少に伴って少なくなります。

大気拡散した煙の濃度の推移

ただし揮発性の微粒子を除き、煙の物質がただちに0に消えてなくなるわけではないでしょう。実際には0でなくても、一定以下に拡散・希釈した時点で、人間が吸い込んでも感知できなくなるレベルにまでなると考えられます。

大気中には煙以外にもいろいろな不純物質があると思います。現実的には人間の鼻で感知できないレベルになったら臭いが無い=煙が無くなったと言ってもよいかもしれませんね。

ヤマダ
ヤマダ

感知できるレベルは人によって大きく異なります。犬並の鼻を持っていたら生きづらそうです(汗)

問題になるのは拡散が不十分な状態で地表に降りる場合

大気拡散により、拡散・希釈されながら煙の濃度は薄まり最終的には人が感知できなくなると書きました。薪ストーブの煙が問題になるのは、拡散・希釈が不十分な状態で生活エリアに降りてしまう場合です。

人間が感じ取れる程度で生活圏に降りれば、誰だって不快感は感じますし、子供に吸わせたくないという心理は分かりますよね。10人中10人が感じ取れる煙であればさすがに許容オーバーではないでしょうか。

逆に言えば、常に臭いを感じないレベルに拡散・希釈してから地表に降りれば薪ストーブを使用してもなんら問題ないでしょう。例え住宅街であってもです。

ただし、住宅が立ち並ぶ場所では風や気流の発生は避けられません。薪ストーブ程度の煙突高では煙は簡単に影響を受けてしまいます。そのため常に100%無臭にすることは現実的には不可能ではないでしょうか。

ちなみに建物の気流に飲まれて煙が下がるダウンドラフト現象を防ぐためには、周辺建物高の2.5倍より高い煙突が必要と言われます。

逆に言えば、薪ストーブは時に近隣の地表に臭いを発生させてしまう可能性があるものです。特に住宅街で利用するならば、多少の煙を周辺住民に許容してもらうことになります。

「薪ストーブは近所とのコミュニケーションが重要」と言われる所以かもしれませんね。

ヤマダ
ヤマダ

許容できるレベル(言わば常識の範囲のレベル)も人によって異なります。人が多い住宅街ではトラブルになりやすいのは必然です。

どこの家か分からないけれど、なんだか薪ストーブ特有の臭いがする……ということは我が家の周りではしょっちゅうです。

煙の微粒子はどうなる?

人間の鼻で感知できないレベルになっても、揮発性の物質以外の微粒子は残ると考えられます。それらは非常に軽いので、その辺を漂ったり、重力により地表に落ちたりするのでしょう。

いずれにしても臭いとして感じなくなればどうでもよいこと。……なのですが、一つだけやっかいな問題があります。それは煤塵です。周囲の住宅にとっては煤塵は目視でも確認できる微粒子です。

もちろんその辺に落ちている煤塵などは見えません。目に見えるのは白などの目立ちやすい部分です。引き違い窓の周辺やベランダ等が黒っぽくなっているのが見てとれますね。

もっとも分かりやすいのはベランダの手すり。一見何も無いのですが、布団を干すたびに手すりを抜くと黒くなってしまいます。まあ我が家の場合はいろんなところから煙がやってきますからね。

我が家の煤塵は色が濃い(多い)ため、感知できないレベルに拡散される前に地表に落ちているものも多量に含まれていると思います。

つまりは目に見えなくてもそこら中にそういった微粒子が降ってきているということです。もちろん薪ストーブの煤塵だけというわけではなく、その他野焼き等にも原因はあると思いますけどね。

まとめ

以上、煙の発生からその後まで含めてご説明しました。被害に遭っている側だからこそ、熱意を持っていろいろ調べることになった次第ですが、目に見えないので本当に難しいですね。

実際には風や気流などの様々な要因があるため「これ」という確実なものは挙げられません。しかしながら本ページでもっとお言いたかったこととして、

  • 見た目では分からない
  • 煙はどこにでも拡散しながら流れていく可能性がある

ということが充分に説明できていたらと思います。

いずれにしても、周囲に多かれ少なかれ影響を与えるのが薪ストーブです。どこにでも設置することはできますが、住宅密集地での親和性は高いとは言えないのが現実でしょう。

住宅密集地や都会で使ってはいけないわけではありません。しかしながら薪の調達のことなど諸々のことを含め考えると、やはり田舎であるほど適している暖房器具なように感じます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました