薪ストーブの煙を昇らせるにはドラフトが大事!これがダメだと住宅街では臭い被害が発生しやすいという話

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煙と臭いの基礎知識(薪ストーブ共通情報)

私は、薪ストーブの煙突が窓から何本も見える家に住んでいます。室内で臭いを感じて窓に目をやると、どこかの家の薪ストーブがついていることは冬なら普通です(同じ家が多いですが)。

対してふと窓を眺めた際、煙が出ているのに全く臭わないこともあります。これはなぜでしょうか。

これにはその日の風(向き&強さ)ドラフト(煙の気流)の2つの要因があると考えられます。本ページでは後者のドラフトについて詳しく見てみたいと思います。

うまくドラフトできているかは無風時の煙突の煙の出方を見れば外からも判別可能です。理解することで臭いに対する考察にも役立つことでしょう。

ヤマダ
ヤマダ

薪ストーブの煙被害を受けている側からの目線で書いてます。

ドラフトとは

辞書でdraftという単語を引いてみましたが、複数の意味があります。薪ストーブ関連で意味することは「気流」や「空気・煙の吸引」のことを意味すると考えられます。

ドラフトの基本

暖かい空気は上昇する。これは誰でも知っていることですよね。

薪ストーブ庫内から発生した直後の煙は基本的に熱いです。つまりは上昇気流(アップドラフト)が発生します。

同時にその上昇気流に引っ張られる形で負圧が生ずるため、薪ストーブは室内の空気を吸引します。そしてその空気により、さらなる燃焼が生じるという仕組み。

結果画像の様な一本道の気流の流れが生み出されるというわけですね。

  1. 薪ストーブの燃焼
  2. 煙等の発生
  3. 煙が上昇気流で押し上げられる
  4. 室内の空気が吸引される&煙突から煙が出る

これら全体の流れは英単語のdraftである「気流」や「空気・煙の吸引」そのものです。以後本ページで「ドラフト」という場合は、このことを思い出してください。

ドラフトが強い=この気流が強いということ。弱い場合はその反対です。もしもドラフトが悪い場合、この1本道内のいずれか(または複数)に原因があるということになります。

シンプルに上昇気流をドラフトと言う場合もあります。

ダウンドラフト

ダウンドラフト(周辺建物による風の渦)

ダウンドラフト、直訳すると下降気流ですが、大気拡散時の特定現象を示す専門用語として存在します。

薪ストーブには一見関係無さそうですが実は大ありです。

煙突内の煙の温度が低い場合。つまりドラフトが弱い状態では、煙突から出た煙の吐出力は弱い=上昇する力があまりありません。

その際に風下にある建造物付近で生じる渦に煙が巻き込まれると、降下していくこともあるのです。

ダウンドラフトについてはいずれ別ページにて改めて書きたいと思います。

環境省によると、焼却施設などのダウンドラフトを防ぐためには、煙突の高さを周囲の建物の2.5倍より高くすることとしています。薪ストーブは屋根から少し出る程度の煙突高なので、周辺建物の影響は避けられませんね。

バックドラフト

バックドラフト例

薪ストーブの煙突から出るはずの煙がほとんど出ずに逆流する、backdraft(バックドラフト)という現象もあります。

本ページでは直接的には無関係ですが、後述する「負圧」や「風圧帯」の説明とも関係がありますので書いておきます。

これが発生すると薪ストーブ設置の室内に煙が戻ってくるので、室内にも煙が充満することがあります。

煙が直撃した時の臭いを知っている私が想像するに、おそらくめちゃくちゃ臭いはずです。

ヤマダ
ヤマダ

当分は室内が臭いそうです。燻製でも失敗すると何日か臭いが残るくらいですから。

ドラフトと薪ストーブの煙・臭いの関係

冒頭でも触れましたが、薪ストーブから排出される煙を臭いとして感じる度合いはドラフトが影響します。ここでは臭いとどのような関係があるのかを詳しく見ていきたいと思います。

薪ストーブはドラフトのみで排煙する暖房器具

薪ストーブは煙突から排煙することは広く知られていることです。しかし薪ストーブ本体にも煙突にも、排煙するためのファンなどの機構は一切備わっていません。それでは煙はどうやって処理するのか。

先ほどの説明で書いたとおり、ドラフトにより排煙します。つまりは薪を燃やした際に発生する熱により、煙突から煙を押し出す流れのみで排煙します。

つまり排煙にはドラフトが大事というよりも、ドラフトが全て。薪ストーブは100%ドラフトに頼るしかない暖房器具なのです。

ヤマダ
ヤマダ

素人意見ですが、ペレットストーブのように補助するファンでも付ければ住宅街でも使いやすいんじゃないかなぁと思うのですが。一応ドラフト補助装置はあるようですが普及していないようです。

ドラフトが弱いと臭いやすい理由

煙は煙突から出た後、徐々に見えなくなりますが成分ごと消えて無くなるわけではありません。消えるように見えるのは、大気中に成分が拡散・希釈しているだけです。これを専門的には大気拡散と言います。

当然地表から離れたところで拡散・希釈されるほど煙の成分が少なくなる。つまり臭いとして感じにくくなります。

ヤマダ
ヤマダ

焼却施設の煙突が非常に高いのはそういう理由ですね。

ドラフトが強いとその分強く上昇する力が働きます。煙に勢いがある分、煙突より高い位置で拡散・希釈されます。対して弱い場合は煙突から出た煙に勢いが無く、煙突に近い位置で拡散・希釈されることになる。つまりはドラフトが弱いと臭いやすいことになります。

ドラフトの強弱による煙の違い

隣でタバコを吸われれば濃い煙がきますが、10M離れた場所で吸われれば薄い煙になるのと同じ理屈ですね(10Mでも直に流れて来れば充分臭いですが)。

ドラフトが弱いとダウンドラフト・ダウンウォッシュが発生しやすい

ドラフトが弱いとさらに良くないことがあります。

先ほどダウンドラフトという用語について書きました。周辺建物に生じる風の影響で煙が降りてくる現象です。さらには似たような現象で、煙突背後の気流に煙が巻き込まれて降下するダウンウォッシュという現象もあります。

いずれも排煙温度が低い&煙突から吐出した煙の勢いが弱い場合に起こりやすい。つまりはドラフトが弱いとより起こりやすくなります。

用語を覚える必要はありませんが、問題なのは煙が降りてくること。地表に近い私たちの生活圏まで濃度の高い煙が流れてくるものです。

周辺の家にとっては致命的な悪臭に繋がります。加えて洗濯物に臭いが付いたり、健康問題も生じます。

つまりドラフトが弱いのは悪いことしかありません。

ヤマダ
ヤマダ

これが発生すると辺りが強烈な臭いに包まれホント辛いです。

臭いを抑えるにはドラフトは強ければ強いほど良い

これまでに触れた通り、ドラフトが強いほど煙突から出た煙は勢いが強く、上昇しながら拡散・希釈されます。加えて風や気流の影響も受けづらい。そのため臭い防止の観点からは、ドラフトは強ければ強い方が良いことになります。

こういった理由により、ドラフトは臭いの改善を改善できる重要な要素と言えるわけです。

とは言え、煙成分がその近辺から消えて無くせるわけでは無いので完全無臭にはなりません。さらに言うなら例えドラフトが強くても、それ以上の強い風・気流があれば負けてしまうこともあります。

それでも排煙はこのドラフトに頼るしかないわけで、できるだけ強いに越したことはないでしょう。

本ページでは臭い防止の観点からドラフトは強ければ強い方がよいとしています。しかしそれ以外の観点からはドラフトが強すぎることによる問題もあるようです。

ドラフトの強さに影響を与える要因

そうと分かれば何としても強いドラフトで薪ストーブを利用してもらいたいところです。もちろん被害者側からドラフトを強くすることはできないので、こちらからは提案やお願いしかできませんが(汗)。

ドラフトの強さに影響を与える要因はかなり複数あり、この総合力によってドラフトは決まります。それでは1つずつ見ていきましょう。

薪ストーブ庫内の温度

これまでにも書きましたが、煙の温度が上がるほど上昇する力が働くため、ドラフトが強くなります。煙の発生源は薪ストーブ庫内ですので、つまりは庫内の温度が高ければドラフトが強くなるというわけですね。

特に焚きつけ時(付けはじめ)に臭いやすいのは、煙が多く出るタイミングなのに庫内の温度がまだ充分に上がっておらずドラフトが弱いため。あとは薪を追加したときも下手をすると温度を下げてしまう原因になります。

薪ストーブの温度を一瞬で高温にすることはどうやってもできません。つまり焚きつけ時には煙や臭いが多かれ少なかれ出ることは避けられないということです。

薪の水分は15%~20%(計測できる機器もあります)

そもそもの大前提となるのが、充分に乾燥させた薪を利用することです。乾燥が不十分だと、水分を蒸発させるのに熱が奪われてしまい庫内の温度が上がりません。その際は不完全燃焼が続くことになり、煙も多く出ます。

これが大前提であり、非常に重要な要素です。水分の適正値は15%~20%ですが、測っている人はどれくらいいるのでしょうか。

他には朝まで暖かく過ごせるよう、寝る前に薪をぎっしり詰めて空気を絞って使うようなケース。こちらも給気が足りずに薪がくすぶって長時間不完全燃焼となり、大量の煙が発生します。

対策例
  • 乾燥した薪を使う
  • できるだけ素早く薪ストーブ庫内の温度を上げる
  • 薪をくすぶらせない

煙突の断熱性

煙突の断熱性が高ければ、薪ストーブ庫内から発生した煙の温度が煙突内で下がりづらい。ひいてはドラフトのパワーを極力減らさず、煙突の排出口まで煙を昇らせることが可能です。

煙突の断熱性をより高めるには二重煙突にすることです。二重煙突にも断熱材が入ったものとそうで無いものがあります。さらにはその断熱材も25㎜~50mmなどグレードがあるそう。

特に住宅街では、少なくとも外気にさらされる部分は二重煙突にすることが推奨されます。

ヤマダ
ヤマダ

断熱二重煙突の方がもちろん高額なので、ここをケチられることもあるかもしれません。

対策例
  • 煙突は断熱二重煙突にする
  • 性能を追求するなら断熱材は厚みがあるものを選択する

煙突の高さ

煙突は高い(長い)方が強いドラフトを生み出します。例えば走り幅跳びなら、助走が1Mよりも10Mあった方が遠くに飛べるイメージでしょうか。

あまり無いとは思いますが、薪ストーブ本体を2階などに設置してしまうと十分なドラフトが得られないことがあるようです。

加えて屋根付近には風圧帯という、風が建物などにぶつかり渦巻く現象があり、この影響で煙が煙突から逆流することがあります。こうなるとドラフトうんぬんという問題ではなくなります。

建築基準法の最低限の煙突の高さと、風圧帯を考慮した煙突の高さ

上記図の左側のように、建築基準法では煙突トップを屋根から60cm離せば良いのですがこれだけでは十分ではありません。

図右側のように、屋根の一番高いところ(棟)より60cm高くすること。これが風圧帯の影響を受けづらい高さです。後述しますが、煙突を極力外気にさらさないこと&外観も考慮すると、棟に近い位置が論理的にはベストでしょうか。

ただ、当たり前ですが煙突は高ければ高いほどコストがかかります。断熱二重煙突であればなおのこと。予算の関係で煙突を短くしている場合は注意です。

煙突の高さが自宅や周囲の家の軒よりも低いのは、住宅街ではNGレベルです。特に煙突口の横や上に窓や高い建物があれば、煙や臭いが直撃してしまうでしょう。平屋に薪ストーブだと普通にありえます。

対策例
  • 薪ストーブは1階に設置する
  • 煙突は棟より60cm以上高くする

煙突の径

煙突は長さだけでなく、基本的には径も大きいほどドラフトが強くなります。

大抵の薪ストーブでは大抵は内径150mm(二重煙突なら外径200mm~250mm)のようでこれが基本の径です。ホームセンターで売っている安価なストーブのような100mmを使用されている場合は注意が必要です。

大きめの薪ストーブの場合は内径200mmも使われることもあるようで、よりドラフトは強くなります。

対策例
  • 内径150mm以上の煙突を設置する

煙突の形状

まず、煙突はストレートであることが最も効率的なドラフトを生みます。助走は直線の方がよいのと同じですね。

具体的には、薪ストーブ本体から真上に、屋根を突き破って設置することです。

煙突の形状

実際には間取りや柱・梁などの諸事情により、真横や斜め横に曲げてから上に延ばす場合もあります。

決してこれだけでNGというわけではないのですが、その分ドラフトの効率が下がるのは否めません。

特に真横に曲げるのは、感覚的にも煙の流れがスムーズでなくなるのは想像できますよね。

これら横方向に曲げることを横引きといいますが、極力させないこと。せざるを得ない場合も最大で1M~1.5M以内に抑えることが推奨されているようです。

対策例
  • 煙突は真上にまっすぐに伸ばす

煙突の位置

大別すると、煙突は家の壁を抜いて横に設置されるケースと、屋根(と天井)を抜いて設置されるケースに分かれます。

横に設置されている場合、必然的に先ほどのとおり横引きが発生する問題があるのが一つ。加えて天井を抜くよりも、冷たい屋外に煙突が露出する面積が多くなります。

例え二重煙突でも、真冬の冷たい空気にさらされるのと、暖かい家の中にあるのとでは多少の違いはあるでしょう。同様の理由により、同じ屋根を抜いて通すにしても、棟付近で通した方が屋外への煙突露出を少なくできますのでベターです。

いずれにしても壁横に位置する煙突は、ドラフトの観点からはややマイナスと言えるでしょう。

対策例
  • 煙突は屋根を抜いて通す
  • 煙突は大棟に近いところに通す

煙突の定期清掃

薪ストーブはずっと利用していると煙突内(煙道・煙突トップ)に煤やタール・クレオソートなどの汚れがたまります。メンテナンスを怠ると、汚れで狭くなった分スムーズなドラフトがしにくくなります。

これは血管の動脈硬化に例えると分かりやすいでしょうか。血管壁内にコレステロールなどがたまると狭くなり、血流を阻害します。それだけなら大きな問題はありませんが、ひどくなると心筋梗塞や脳梗塞にもなる恐い状態です。

薪ストーブも同様で、ちょっとドラフトが弱くなるだけならたいした問題にはなりません。ですがあまりにメンテナンスを放置すると煙道火炎を引き起こすこともあります。

そのため薪ストーブは必ず定期的なメンテナンスが必要です。

煙突トップに鳥の巣が作られていて通りが悪くなることもあるようです。

対策例
  • 定期メンテナンスをする

室内の負圧

室内が負圧(室内の気圧が室外よりも下がる)になることでも、ドラフトが生じにくくなります。

紙パックジュースを飲みほそうと、ストローで吸い込むとペコッと凹みますよね。紙パック内の気圧が下がっているのでこれも負圧状態です。

この際、紙パックのどこかに小さな穴が開いていても、その穴から紙パック内の空気は外に出づらいはず。むしろストローからの吸い込みが強ければ逆に中に入っていくこともありそうです

それと同じことが住宅&ドラフトにも起こりえます。例えば以下のような要素が負圧になる要因です。

  • 24時間換気システム
  • レンジフード(ここにも24時間換気機能がついていることも)
  • その他換気扇(お風呂場・トイレ・キッチン等)

先ほどの紙パックの例えなら、これらはストローで吸い込む部分と同じですね。室内の空気を外に出しているわけですから。

戸建てだと特に強力な場合も

近年の住宅は高気密住宅が増えてきており、24時間換気システムが搭載されることも当たり前。

特に排気口のみに換気扇を設置する第3種換気の住宅も多く、常時室内が負圧になりやすいです。

そのため薪ストーブのドラフトに影響を与えることもめずらしくありません。対策として薪ストーブに外気導入(外から空気を入れる)することもあります。

他の対策法としては、先ほどの24時間換気をや換気扇類を全て止める方法があります。しかしスイッチが複数あって面倒という場合は、1カ所所だけでも窓を開ければ改善が見込めます。

現在の住宅で最強の負圧の原因はおそらくキッチンのレンジフードでしょう。フルパワー時はすごいですので。焚き付け時に料理をしないのも効果がありそうに思います。

ヤマダ
ヤマダ

料理をしていたら玄関が重くて開きづらいという経験をしたことがある方も多いと思います(特にマンションでは)。それくらい内向きに力が働いているということですね。

対策例
  • 設置時に外気導入をつける
  • 薪ストーブの焚きつけ・薪の追加時は1箇所窓を開ける
  • 薪ストーブの焚きつけ・薪の追加時は料理を控える

まとめ

以上、ドラフトが重要な理由について解説しました。いろいろな項目があったことでもわかるとおり、特定の1要素で決まるわけではありません。様々な要因の上での総合的な結果としてドラフトが決まります。

これらの要素を全て完璧にする必要はありませんが、住宅街で薪ストーブを利用するならできるかぎりのことはしてもらいたいもの。全ては使用する方の意識次第です。

中でも煙突関連は一度設置してしまうとそう簡単には変えられません。せめてなかなか変えられない部分だけでも、設置前に気を使っておく必要があると思います。

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