薪ストーブ関連のサイトを見ていると度々目につく言葉。その内の一つに「クリーンな排気」という言葉があります。
これには以前より、大きな違和感を感じていました。

クリーンって、綺麗・清潔という意味なのでは!?

綺麗なのに高いお金をかけてまで煙突を設置するの!?
薪ストーブがクリーンな排気と言われても、日々煙&臭い被害に遭っている私には超絶意味不明レベルの言葉に感じます。まるで誇大広告ではないかと。。
とは言え、それがまかり通っているということはなんら問題になっていないのでしょう。しかしなぜ、この表現が許されるのかについては疑問が残るところです。

私自身、表記に気を使う仕事をしているため、これは放ってはおけない!
……ということで調査してみました。
結論から言えば、法律も絡むので素人の私には難しかったです。残念ながらはっきりしたことは分かりませんでした。
しかしながら大手企業の事例も見かけることができ、誇大広告とは見なされていないようです。大手は法令遵守に厳しく、問題があればすぐ話題になるはずでしょうし。
半端な結論につき恐縮ですが、調べた過程を残しておきたいと思います。
クリーンな排気とはどういう意味!?

そもそもの用語の定義が誤っていると、考察する意味がありません。左脳人間の私は、いつもの通り、まずこの用語の定義から再確認しました。

一応の予想としては、「清潔な気体を(何かの入れ物から)外に出すこと」かなぁというイメージです。
辞書による「クリーン」の定義
まずは単語の前半部分の「クリーン」からです。
毎度おなじみの、goo国語事典で調べてみました。
1 清潔なさま。きれいなさま。「―な選挙」
clean(クリーン)の意味 – goo国語辞書
2 鮮やかなさま。見事なさま。
1は丸々想定の範囲でしたが、2のような別の意味もあることを忘れていました。
よく考えれば、野球で「クリーンヒット」って言いますものね。これは「清潔なヒット」ではなく、「鮮やかなヒット」、「見事なヒット」ということだと思います。
辞書による「排気」の定義
こちらも同様にgoo国語事典から引用です。
1 容器や建物内の空気を外へ除き去ること。「パイプを通して屋外へ―する」
排気(はいき)の意味 – goo国語辞書
2 熱機関で不用となった燃焼ガスなどの気体を排出すること。また、その気体。⇔吸気。
こちらは全て想定通りの内容です。
不要な気体を排出することに他ならないと思います。
クリーンな排気とは!?
ということで薪ストーブの「クリーンな排気」ですが、煙突から発生する燃焼ガス(煙)を排出する以外に、読みようがありません。
したがって焦点となるのは「クリーン」の方だと思います。
- 清潔な煙を排出?
- きれいな煙を排出?
- あざやかな煙を排出?
- みごとな煙を排出?
……やはりしっくりきません。
英語には英語独自のニュアンスがあることもあるので、そういった部類なのでしょうか。
私が知らない別の意味合いがあるのかもしれません。
仮説
いろいろ考え・調べてみましたが、以下の様な仮説を立てました。
- (従来品等と比較して)排ガスがきれいという意味から
- clean burningという英語の意味から
ちなみにclean-burning=燃焼による大気汚染が無い(少ない)排ガスの無い(少ない)、という意味があるようです。
完全燃焼に近いイメージでしょうか。
触媒、二次(三次~)燃焼などによりclean burningな薪ストーブ。従来品と比較して排ガスも少ない(きれい)。
そんな感じでクリーンな排気?
被害者の立場としてはモヤモヤするところですが、こんなところなのかなぁと想像しました。
その他の業界でも調べてみる

よくよく考えると「クリーンな排気」というのは他でも耳にしたことがあるような気もします。
参考になるかと思い、その他業界での謳い文句も調べてみました。
掃除機
最初に目に付いたのが、掃除機の宣伝にて使われていた「クリーンな排気」です。他にも「排気クリーン」「綺麗な排気」「排気爽やか」など類語もありました。
掃除機は、ゴミやホコリを吸引するわけですから、その分排気も必要です。
極めて微細なもの(PM2.5やそれ以下)も吸引するため、フィルターがあっても100%は補足しきれないことでしょう。ひいては排気でそれらをまき散らすので、素人目に考えても吸い込みたいほど綺麗なものではなさそうです。

うーん、クリーン?爽やか?
ただし補足しておくと、「クリーンな排気」表記に関するほとんどが、ニュースサイト・個人サイト・比較サイト・個人Youtuberでした。
それでは参考にならないので、「法人が商品紹介に用いているもののみ」に注目するとほとんどない……。
近いものも含め、見つけたのはこんな感じです。
会社 | 文言 | 仕様・説明 |
---|---|---|
アイリスオーヤマ | 排気もクリーンに行い、床だけでなく空気もキレイに キレイな排気、変わらないパワフルな吸引力 もっとクリーンな排気へ | 3層マスクフィルター仕様 |
BOSCH | 微細な粒子も99.9%逃さずクリーンな排気システムで気持ちよく作業できます | 特にクリーン(99.9%逃さず)に対する説明なし |
日立 | きれいな排気 吸い込んだごみを99.999%逃さない | IEC 60312-1:2010(ed.1)に準拠して測定 ※IEC:国際電気標準会議 |
マイナー企業のものは他にもあったのですが、知名度のある会社に絞ればたったこれしか見つかりませんでした。
基本的には一部の例外を除き、性能が良いものに対して使われているようです。さすがに日立だけは別格で、第三者機関によるエビデンスを添えています(厳密にはクリーンではなく、「きれい」ですけれど)。
BOSCHは外国企業なので…………。でも、薪ストーブも外国産が多いです。外国では言いやすい言葉がそのまま日本に入ってきている可能性もあるのかもしれません。
クルマ(主にディーゼル車)
当然ですが、クルマは有害な排気ガスが出ます。しかしながら自動車関連のポータルサイト等では「クリーンな排気」として説明されているのを多数確認できました。
ただしこれも、自動車メーカー自体は書いてないんですよね。オフィシャルサイトでは、以下のような表記に留まっています。
- クリーンなクルマづくり(トヨタ)
- 排ガスのクリーン化(ホンダ)
- 排気ガスをクリーン化する、最新の排出ガス後処技術を採用(いすゞ)
- エコでクリーンなドライブを(スズキ)
- クリーンなクルマづくり(スバル)
- クリーンな走り(スバル)
- 排出ガスのクリーン化に向けて(日産)
大企業ばかりなので、曖昧な表現は使わないようにしているのかもしれません。
しかし、そんな中でもクリーン・排ガスというワードが連呼されるのがディーゼル車です。
今日では環境に配慮された排ガス規制の基準を満たしたクリーンディーゼル車というものがでています。各社、排気が従来より優れている、綺麗であるという説明をしています。
しかしながら、それでも公式サイト内でどうどうと「クリーンな排気」としている表記は見あたりませんでした。
……が、サイト内の資料やサブ的な運営サイトからはチラホラと見受けられ、絶対使われないわけではないようです。

そもそも「クリーンディーゼル」という名称が認められる現状を考えれば、これは言っても良さそうにも思えるのですが……。
排煙処理装置
各種排煙処理装置にも、クリーンな排気・排煙という言葉が確認できました。
排煙処理装置とは、以下の様な煙が出る施設で、それを減少させる装置のことです。
- 飲食店のダクト
- 食品工場のダクト
- 火力発電プラント
いずれも100%処理されるわけではないでしょうから、そこまでクリーンな印象はありませんね。
飲食・食品関係の方は私も知らない会社でしたが、火力発電は三菱重工(=大企業)でした。
これらの総評
自動車メーカーのような大企業ではあまり使われていません。……が、かといって絶対使われていないわけでもないようです。
つまり、グレーな扱いなのでしょうか!?
とにかく共通するのは、掃除機・ディーゼル車・排煙処理など、もともとは汚いものを排出するものばかり。そして従来品よりも「減らした・より綺麗にした」製品でクリーンとしているようですね。
特に大企業では、そう言えるエビデンスを提示できる場合に使用していると考えられます。

いざというとき、第三者機関の測定結果や、特定機関の認証を得ているから「クリーンな排気」と説明できるからでしょう。
本当に薪ストーブはクリーンな排気なのか!?

最後に、薪ストーブの排出する煙はクリーンなのか、私見を書きたいと思います。
カタログスペックと現実は異なる
従来品よりも排気が綺麗な薪ストーブはもちろんたくさんあることでしょう。ただそれは、カタログスペック通りなら……ということに注意が必要と考えます。
正しく乾燥させた薪が、適切な使用方法により、常に完全燃焼できている。そんな最高の状況で誰もが使用できれば「クリーンな排気」と言うのもまだわかります。
しかし一般ユーザーによる現実はこうです。
- 薪のコンディションは一定でない
- 煙突の高さ・性能などの設置環境はまちまち
- 焚く人のほとんどは素人
- すぐには完全燃焼しない
使う人の意識、テクニックが低かったり、薪が悪ければ煙が出まくり。それに上手く使っても炊き始めは煙が出ます。
したがって薪ストーブはカタログスペックと現実では異なるものと言えそうです。
PM2.5
クリーンかどうかの指標の一つとして、PM2.5を考えてみます。
例えば私の環境下では、薪ストーブの炊き始めのPM2.5は10~20μg/m3前後くらいになることが多いです。瞬間値は50μg/m3を超えることもあります。
この数値は、PM2.5対応の給気口フィルター越しでの室内測定です。
ちなみに国が定めるPM2.5の環境基準は1日平均35μg/m3。私の環境では1日にならすと平均を下回ります。
とは言え、薪ストーブを焚いていないと通常時=1桁μg/m3。さらにはPM2.5だけでなく、燻製のような独特の臭気も伴うので、体感的にはクリーンとは思えません。
使う人次第で公害レベルにまで
補足したいのは、私の隣人は近所で最も上手な利用者(煙が少ない)であり、煙突もとても高い点です。
先ほども触れたとおり、薪ストーブは燃料である薪・薪ストーブ本体・煙突・利用者の腕など、煙の出る変数が多いです。変数が多いほど、掛け合わせた結果として数値のぶれ幅も大きくなります。
私の環境でこの数値であれば、悪環境下(特に屋外)ではクリーンとはほど遠い、公害レベルにまでなる可能性すらありえるでしょう。
掃除機のように、誰が使っても同じ結果であれば、クリーンもまだわかります。
しかしながら、使い方次第で結果が大きく変わるものを一律に「クリーンな排気」としてしまうのは違うように思います。

誰がどう使ってもクリーンな排気ができると、ユーザーは誤解しちゃいますので。。
余談:無煙薪ストーブもある
クリーンよりも衝撃的に思ったのは、「無煙薪ストーブ」まであることです。「クリーン」「きれい」という抽象的な言葉ではなく「無煙」と言いきっているところが驚きです。
ただ、以下の様に記載しています。
焚きつけ時は少し煙が出ますが、燃焼温度が上がるにつれてかげろうのような透明な煙に変わっていきます。薪の状態や空気量が不適切だと煙が出ます。
よくある質問 | モキ製作所

無煙薪ストーブなのに煙出るの!?でも、書いてるだけ良心的かもですが。
モキ製作所は、薪ストーブ業界の中では良い製品を作っているという声も耳にします。煙公害を解決しようと活動してきた経緯もあるようで、その点ご立派です。
それに発売当時(1988年~)はそれで良かったのかもしれません。
しかし、住宅街に薪ストーブ設置が増加し、違った問題が増えている昨今においては、このネーミングは誤解を招くように思います。

薪ストーブの煙が気になるのですが……

我が家は周囲に配慮して無煙薪ストーブを使ってます。なので煙は出ていないはずです。
……と、こう信じ、主張してくる相手にどう説得すれば良いのか分かりません。。そんな「無煙薪ストーブ」は文部科学大臣賞受賞をしており、国のお墨付きも同然な現実があります。

命に関わる問題でないからと言って、誤解を招いて良いわけではないと考えます。
まとめ
薪ストーブに限らず「クリーンな排気」と言われるのは、綺麗でないものを排出する製品の宣伝文句のようでした。
なので吸い込みたくなるようなクリーン(綺麗)を意味する訳ではないため、私の感じた違和感は当然だったわけです。
しかしながら従来よりすぐれた製品。例えばEPA認証などの基準を満たした根拠のあるものについて「クリーンな排気」というのは、論理的には問題ないのかもしれません。
まあそうでなくても、

この機種は実に見事な排気を実現しています。え!?クリーンって「見事」という意味もあるんですよ。
という強弁もできるのかもしれませんしね。
個人的にはどうかと思いますが、これが世の中のルールで認められるなら仕方ないと思います。
しかしながら、ルール(法律)でOKであれば何をやってもよい訳ではありません。例えば住宅街で薪ストーブを無作法に使えば、マナー違反で反感を買う可能性があります。
同様に企業も、誤解を招きかねない言葉を宣伝に並び立てれば、イメージを損ねる可能性もあるのではないでしょうか。

掃除機など、自分だけで完結するようなものだったらいいんですけどね!
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