薪ストーブを利用されている方の中で、
焚きつけは夜間や早朝に行うよう気をつけています!
という方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。
その理由の多くは、ご近所に対する配慮だと思います。特に住宅街で薪ストーブを使うなら、こういった気遣いはとても大事なことですよね。
しかし……です。現実には、夜間や早朝に焚き付けをすれば万事OK、と言えるわけではありません。むしろ場合によっては周囲が迷惑を感じていることさえあるのです。
本ページでは、焚き付けを夜間・早朝にすることの意味や、それに伴う弊害。そして焚きつけ開始時間以外にも重要な要素があることを、実体験を元に解説したいと思います。
なぜ、夜間や早朝に焚き付けを行うのか
夕方や朝でもなく、なぜ夜間や早朝に焚き付けを行うのか。そもそもの理由について、改めて考えてみたいと思います。
周辺住民への配慮
こちらは冒頭でも触れたとおりですね。最も大きな理由は、周辺住民への配慮だと思います。できるだけ近隣住民に迷惑をかけないようにということです。
- 焚き付け時は最も煙が出やすいタイミング
- 煙が出ている=迷惑に感じる人がいるかもしれない
- であれば焚き付けを行う時間を考慮しよう
- 周辺住民が活動する早朝・夜間が良いのでは!?
このような論理だと思います。
誰が最初に提言したのか分かりませんが、何となく通説っぽくなっている感もあります。たしかに理屈としても通っているようにも思いますがどうでしょうか。
実際問題、効果は一応はあるけれど……
昼間は洗濯物も干されますし、屋外に出る頻度も比較的多いです。昼間に焚き付けを行えば、洗濯物に臭いが付いたり、臭いを感じたりする機会も発生しやすいことでしょう。
ですから、夜間・早朝に焚き付けを行うことで、想定する効果も一応はあるかもしれません。
しかしたくさんの人が住む住宅街では、周辺住民の生活パターンは人それぞれです。早朝5時~深夜24時くらいなら活動している人は普通にいます。
さらにはそもそもが室内にいても焚き付けの臭いを感じることも多いです。この場合、何時に焚き付けをしても周囲が迷惑を感じることは変わりません。
少なくとも昼間に使わないでいただくことだけは、洗濯物に臭いがつかないので効果はあります。ただ、夕方や遅めの朝でもそれほど変わらないかも!?
煙を見えなくするため
一方で、以下のような理由もあるかもしれません。
- 住宅地で煙がモクモクと上がっている様は周囲の心証があまり良くなさそう
- 夜間・早朝に焚き付けをすれば周囲の目に付きづらい
- だから夜間・早朝に焚きつけしている
煙が見えない時間に焚きつけることで、できるだけクレームを避けたいという心理です。
これが第一の理由ではないにしても、心の片隅にそんな心理があってもおかしいことではないと思います。好き好んでクレームを受けたい人などいないですから。
ただ、「迷惑をかけたくない」のは周辺住民のためですが、「クレームを避けたい」のは自分のためです。自己保身が第一になってしまい、周辺住民への配慮の気持ちがないと問題かもしれません。
夜間や早朝に焚き付けを行うことの弊害
冒頭にて、夜間や早朝に焚き付けをすることは万事OKではない、時に迷惑を掛けることもあると書きました。ここではその辺りを詳しくみていきたいと思います。
前提:家の中にも煙は入ってくる
説明の前提として、「薪ストーブの煙は近隣住宅の室内にも容易に入ってくる」という認識が必要です。この前提を信じていただけないと、以降の説明も意味をなしません。
なぜ煙が室内へ煙が入ってしまうかを簡単にまとめると以下です。
- 煙は上がらず直に降りてくることもあるから
- 煙は上がっても後に拡散しつつ地上にも降りてくるから
- 住宅には給気口や隙間があり外気を取り込むから
ひいては近隣住宅の室内が煙・臭いで充満することもあります。めずらしい現象ではなく、室内でも臭いを感じることはごく普通に起こりえることです。
我が家の場合は、最寄りの薪ストーブの煙で冬場室内が臭うのは日常です。別のお宅の薪ストーブよりも煙は少なくてもそんな状況なので、下手な場合はもっと酷いことでしょう。
夜間、近隣住民の睡眠を妨害することも
夜間遅めの時間帯は、近隣住民が寝ようとする時間と重なることがあります。
一般的な入床・起床時刻(要は寝ている時間)に関しては、以下の図をご覧ください。
引用:高齢者の睡眠 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
20時30頃~と、特に高齢者ほど早く寝ることが多いですね。これは平均ですから、プラスマイナス1~2時間くらいは容易に誤差が出ることでしょう。
実際、眠りにつく時間は個人の生活パターンによってぶれ幅が大きいです。私の地元では夕方19時に寝てしまうおじいちゃんもいましたし、朝早い仕事のため早寝する人もめずらしくありません。
夜間(例えば19時~24時)に焚き付けを行うと、近隣住民が寝ようとする時間と重なってしまうことがあります。ひいては臭いで睡眠を妨害してしまう可能性もあるのです。
臭いくらいで眠れないものですか!?
焚き付けの臭いは時に強烈です。加えて強制的に嗅がされるという精神的な苦痛・イライラで眠れなくなることもあります。
早朝、近隣住民が寝ているところを起こしてしまうことも
人間は、外部の刺激により目が覚めるようにできています。特に大きな音・地震などの揺れ・煙などのように、危険に繋がる刺激には敏感にできているのでしょう。
そのため、早朝の焚き付けの煙で、近隣住民を起こしてしまうことがあります。私も最初は、
わぁ!なんだ火事か!!?
と飛び起きたものでした。今では寝ぼけながらも薪ストーブの臭いだと分かりますが、起きてしまうことは変わりません(むしろ起きないようだといざという時危ないですよね)。
体験したことのない方にはこれがどれ程つらいことか分からないと思いますが、これ、本当に嫌なものですよ。煙で起こされるのは、最悪の目覚めと言っても過言ではありません。
闇夜に乗じて臭いを出している住民と思われることも
夜間・早朝に焚き付けを行ったとしても、昼間と臭いが変るわけではありません。
周辺住民は「なんだか煙いなぁ」と思いながらも、外は暗くてよく見えない。当然のごとく臭う原因もすぐには分かりません。私も当初は野焼きかなと思っていたくらいですので。
しかし周辺住民の情報網にて、「あの家の薪ストーブが原因みたいよ」と噂される日もいつかはくることでしょう。そうなったときに「闇夜に乗じてコソコソと臭いを出している住民」というネガティブな印象を持たれてしまうかもしれません。
暗い中で焚きつけるのは「クレームをできるだけ回避する」という点においては有効です。しかしいざ判明したとき、心証的にマイナスとなることもあり得ます。
クレームを言いづらい・我慢させやすい
夜間・早朝にインターホンがなると、ぎょっとしますよね!?なぜなら「普通ではない」と感じるからです。
一般常識的に、そんな時間に誰も普通は訪問してきません。常識外に来る訪問者と言えば、NHKや新聞の勧誘、酔っ払いくらいでしょうか。
そのような理由により、例え厳しい臭いが発生していても夜間・早朝にはピンポンを押しにくい。となると我慢することになります。
じゃあ次の日に言えばいいのでは。
と思われるかもしれませんが、ご近所問題のクレームを言うには強い原動力がいるのです。翌日には被害時点の“今度こそ言う熱”は下がっているので、「また今度にしようか」「様子を見よう」となりやすい。
そして我慢は積もりに積もっていきます。いつか我慢の大爆発を起こせば、利用者さんにとってもプラスにはならないでしょう。
加えて、真っ暗だと薪ストーブが原因なのか相手に信じてもらいにくいです。目に見える煙を指さしながら指摘するのが、近隣住民としては最も言いやすいタイミングなのです。
焚きつけ時間だけではなく、臭いの強さも重要
焚き付けの時間に配慮するだけでも、思いやりの心を持つ薪ストーブユーザーさんだと思います。私の近所には、晴天の真っ昼間でもお構いなしにバンバン煙を出している人もいるくらいですので。
時間に配慮してもらえるだけでも本当にありがたいこと。……なのですが、実はもう一つ重要な要素があります。
それは臭いの強さです。
そもそもの臭いが強ければ、どんな時間に焚き付けをしても周辺住民への迷惑は避けられません。
煙を減らし焚き付けを短くすることが基本
臭いの強さは、「煙突から出る煙の量」と「出ている時間」が指標になると思います。
つまりは焚き付けの煙をいかに少なく短時間で済ませるかということ。これは、昼間に焚き付けを行わないことと同じくらい重要なことだと思います。
以下の関連記事もご参考ください。
臭いを抑えるには、充分に乾燥した良質な薪を使い、技術を向上させることです。ごく当たり前のことでですが、基本だけに極めて重要です。
時には煙が見える時間に焚いてチェックすることも大事かも
近くに街灯などがなければ、辺りが暗くなると煙突から煙が見えづらくなるのは利用者さんにとっても同じことです。
自分がどれくらいの煙を出しているかよく分からない=どれだけ周辺に臭いを出して迷惑をかけているかも分からないということ。
それでは問題があることにすら気づけません。
時には煙が見える時間に焚き付けを行い、煙の発生状況を確認するのも有効ではないでしょうか。
もちろん周囲が洗濯物を干している時間に無理に焚け……という意味ではありません。一例として、煙が見えるぎりぎりの時間はどうでしょうか。
例えば1月下旬~2月くらいになれば、夕方暗くなるのは遅くなってきます。それらの時間に焚き付けをすれば、煙も見えて問題になる可能性は減るかもしれません。
現状を把握することは改善の第一歩です。
初心者さんほど、煙が見える時間に焚くことが大事
下手な人・経験が浅い人ほど、自分の使い方が煙にどう影響するかが分からないはずです。例えば以下のような要素も手探りではないでしょうか。
- 薪の種類・質
- 焚きつけ時の薪の組み方
- 着火方法
- 空気量の調整
変数が多すぎて、正直かなり難しいと思います。プロによるレクチャーを受けても、最初からうまくできる人は少ないでしょう。
どうすれば煙が多く出て、どうすれば煙が少なくなるか。上達するためには、これらの変数を調整しつつ、結果である煙の量を目視でチェックしないとわかりません。
特に初心者さんは、煙が見えない時間帯のみに焚き続けるのは危険です。ぎりぎり煙が見える時間帯に焚きつけて研究した方が、改善に繋がるのではないでしょうか。
まとめ
周辺住民への配慮のために夜間・早朝に焚き付けを行うこと。これは実際に複数の薪ストーブユーザーさんのブログでも目にすることがありました。
それ自体はよく考えてくださっていると思いまし、間違っている訳ではありません。しかし表面的な面だけ参考にして、そうすれば万事OKと考えてしまうと問題です。
やはり住宅街で使うには、そもそもの煙をできるだけ出さないようにすることが前提となります。正しく使用しても煙や臭いをゼロにはできませんが、可能な限り少なくする努力が重要ではないでしょうか。
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