薪ストーブは趣味嗜好が絡むためか、とにかく認知バイアスが生じやすいと考えられます。
実際、薪ストーブで年の半分被害を受けている私から見れば「何言ってんの!?」ということを平気でメディアで発言している人すらいます。
薪ストーブの設置導入を考えている方にとって、これは大きな問題であると考えます。
現実問題、情報にバイアスが全く掛かっていないなんてことはあり得ないことかもしれません。
しかしながら、できるだけ冷静かつ論理的な思考をするお手伝いをしたい!と考え、陥りやすい心理バイアスについてご紹介します。
本ページは「あなたはバイアスに掛かっている!」と非難するためのものではありません。あくまで「気づき」を得るお手伝いができれば幸いです。
セレブリティ効果(Celebrity Endorsement Effect)
有名人の○○ちゃんが薪ストーブを使ってるって!なんて素敵なんだろう。○○ちゃんはかわいいし、おしゃれだし、家も豪華だし、優しそうだし、お家も凄そう。Youtubeで見る度憧れてしまうなぁ。
解説
著名人が製品やサービスを利用・推奨することで、消費者がその製品やサービスを良いと感じるようになる現象です。
この例では○○ちゃんがテレビやYoutubeで薪ストーブを使っていることによって、一般人が薪ストーブに対して好感を持ったり、欲しいと思うようになっています。
しかしながら著名人が使っているからといって、その製品が良いものであるとは限りません。その人がかわいかったり、やさしかったり、性格が良かったりとは全く別の話です。
購入・設置を検討する際には、客観的な情報をもとに判断することが重要です。
権威の訴求 (Appeal to Authority)
環境省の偉い人が、薪ストーブを推奨しているんだって!環境のことを考える専門家が言うならきっと正しいんだろう。都内で使っても大丈夫なら、自分も検討したいなぁ。
解説
ある意見や行動が、権威ある人や組織から支持されているという理由だけで、それを正しい、または信頼性が高いと考える傾向を指します。
このバイアスは、人々が知識や経験が豊富と思われる権威者の意見を無批判に受け入れやすくなることから生じます。
この例では、環境省の関連者が薪ストーブを推奨しているという情報が、薪ストーブが環境に良い選択であるという証拠として認識されてしまう可能性があります。
「あの人」なら、セレブリティ効果も併せ持っているでしょうね。
確証バイアス(Confirmation Bias)
ふむふむ、高性能な薪ストーブを上手に使えば煙が少ないと。そうだろうね。ん!?薪ストーブの煙が気になるという人もいるのか。おそらく一部の神経質な人が騒いでいるんだろうなぁ。
解説
自身の信念や仮説を確認する情報を優先的に探す、注目する、または受け入れる一方、それに反する情報を無視、軽視する傾向を指します。
このバイアスは、情報の収集、解釈、記憶のいずれの段階でも発生する可能性があります。
例えば、すでにあなたが薪ストーブをいいな、憧れるな、設置たいな、という気持ちを持っていたとしましょう。
そんな状態で情報を調べれば、自分にとって都合の良い情報は目にとまる。対して、臭い問題等については無視・軽視してしまいやすくなります。
楽観性バイアス(Optimism Bias)
EPA認証の薪ストーブを買うし、乾燥した薪も使うから大丈夫でしょ。クレームが来る可能性なんて低そうだし。きっといいご近所さんもいい人たちだろう。他の人は知らないけれど、自分は大丈夫。
解説
自身に関して起こる好ましくない事象やリスクを過小評価し、逆に好ましい事象や結果が起こる確率を過大評価する傾向を指します。
このバイアスは、私たちの予測や期待において、楽観的な方向に偏ることで表れます。
この例では、EPA認証の薪ストーブの購入や乾燥した薪の使用によって、問題が起きる可能性を低く見積もっています。
加えて、ご近所さんに関する好意的な期待や、他の人には問題が起きても自分には問題が起きないという考えが楽観性バイアスの表れとなっています。
アンカリング(Anchoring)
NHKで薪ストーブ特集があり、肯定的な内容だった。その後モデルハウスを見に行ったけど、薪ストーブはすごく素敵なもので、上手に使えば煙はほとんど出ないと言われた。住宅街では設置は難しいと言っているという記事もみたけど、疑わしいな。
解説
人々が意思決定や判断を行う際に、初めに提供される情報(アンカーと呼ばれる)に過度に依存するという認知的なバイアスを指します。
この例ではテレビ→販売業者が判断の基準になってしまっています。
実際、過去にNHKで薪ストーブの特集をやっていたことがあります。そういったところでメリットのみの解説をしてしまうと、偏った情報を仕入れてしまう人もいます(そしてさらには販売業者に繋がる)。
最初の情報が後の評価や判断の「基準」となり、それに引っ張られる形で意思決定を行ってしまう。つまりはその後に当サイトの記事を読んで、信用してもらえない可能性があります。
この例では、確証バイアス・権威の訴求とも関係しそうです。
真実性の錯覚(Illusory Truth Effect)
薪ストーブ業者のサイトや雑誌、テレビなどで薪ストーブの素敵さが紹介されている。いずれにも共通するのが、薪ストーブは正しく使えば臭いも少ないという内容。みんなが口を揃えて言っているのだから、これは真実に違いない。
解説
人々が繰り返し提示された情報は真実である、と感じやすくなる認知的な現象を指します。
体感としても、何度も聞いたり見たりする情報は信頼性が高く感じるのは分かりますね。そういうことが多いのは事実なのでしょう。
ただし薪ストーブ業界のように、営利や利権が絡むと、一概に正しいと言えない情報がまかり通ることもあります。
被害を受ける個人しか真実を言わないって怖い……。
認知的不協和 (Cognitive Dissonance)
ずっと前から薪ストーブに憧れていました。火のゆらめきも良いし、木を燃料にするのはエコだし。この度家を建てることが決まり、念願の薪ストーブを設置できることに!改めて情報収集していると、煙害を訴える人もいました。でも、たぶん神経質な人なのでしょう。確かに煙はゼロではないかもしれないが、正しく使えばほとんど出ないはず。
解説
認知的不協和とは、人が持つ2つ以上の認知(信念や知識、意見など)が互いに矛盾する時に、心の中で不快な状態や葛藤を感じる現象を指します。
この不快な状態を解消するために、人は矛盾する認知のいずれかを変える。もしくは無視する傾向があります。
この例では、薪ストーブを設置したかった人が、新たにネガティブな情報を知ります。ずっと「良い物」「憧れの対象」として認知していたので、矛盾が生じてしまいました。
そこで以下の様にして、認知的不協和を解消しています。
- 情報の選択的摂取・無視→たぶん神経質な人なのだろう
- 情報の再解釈→確かに煙はゼロではないかもしれないが、正しく使えばほとんど出ない
薪ストーブに憧れが強い方は、このバイアスの影響を受けやすいので注意が必要です。
まとめ
薪ストーブ導入時に影響を与える認知バイアスについて、考えられるものをご紹介しました。
私は心理学の専門家ではありません。大筋では合っていても、細かいニュアンスで説明にミスがあるかもしれません。用語の詳細を正確に知りたい方は、どうぞ専門書やプロのサイトの文献をご覧ください。
認知バイアスのせいで適さない場所に薪ストーブを設置してしまうと、煙についてのクレームが発生する可能性もあります。100万円以上かけて設置したのに、近隣トラブルになって使えない……なんてことになったら不幸です。
認知バイアスの存在を知り、冷静かつ客観的に考える。そうすることで、より良い判断をしていただくことに繋がればと思います。
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