毎日暑いので、薪ストーブのことを考えている人はあまりいないかもしれません。私のような当事者以外に考えている方の多くは、薪ストーブ設置を検討している方ではないでしょうか。
今回は、よくありそうなネタとして高台の薪ストーブ設置について考えてみたいと思います。
ここは高台で、上に家がありません。ここなら薪ストーブを思う存分使えそうですね!いやー、ここは設置に最適な土地ですよ。
住宅地ではちょっと難しいかもと思っていたけれど、ここなら薪ストーブ設置を検討できるのかも!?
実際、こんな営業トークが繰り広げられているんだろうなぁと想像します。なぜなら、そういう家が近所にも複数あるからです。
結論から言います。上に家が無いからと言って迷惑とならない訳ではありません。煙は下に流れていくこともあります。つまり高台だからOKとは言えません。
謝った認識で住宅地に薪ストーブを設置してしまっては大変です。検討中の方を対象に、このあたりを詳しく説明したいと思います。
本ページの想定ケース
高台だったり、坂の一番上にある土地だったりで、より上には住宅が存在しないケースを想定しています。
例えば上記の写真のような見晴らしが良い立地でなおかつ最も高い場所……とお考えください。この写真では、坂に沿って家が建てられているので、段差があります。
こちらをちょっとデフォルメします。真横から見た視点で、右端の家(A)のような土地とします。
設置・利用の想定
この立地ならB・Cの家に迷惑をかけることはない……と想定されていると思われます。
たしかに「常に」この通りになってくれれば、煙は直撃しないかもしれません。B・Cの家に煙が来たとしても、ある程度拡散した状態と考えられます。
少なくとも煙直撃のキツい臭いを与えることはない。だから大丈夫だろうという想定がされていると推測します。
この考えの根拠
こんなところかなと思います。
- 煙は昇るはず
- 下の家には届くはずもない
- 迷惑をかけることはない・またはほとんどない
- ゆえに薪ストーブ設置は無問題
私も、薪ストーブのことを全く知らなければそう思ったかもしれません。ましてやプロに説明されれば「そうなのか、見晴らしもいいし良い最高の土地だな!」と疑いもしないことでしょう。
しかし、住宅地の薪ストーブは「想像力」が必要です。
設置場所によって周辺環境も違えば、日によって気象条件も変わります。
その結果、思いもよらないことが起こる可能性もあるのです。
実際の設置例
このイラストは、私が知っている実際の設置例をイラスト化したものです。特徴として、非常に高い、まっすぐな煙突があります。
煙は下の方向にも流れる
そんなまさかと思う方もいるかもしれませんが、煙はごくあたりまえに下に流れます。目視で確認する限り、むしろこの例においては、下に流れることが多いくらいです。
下へ巻き込みやすい気流が発生しているようですが、その原因は素人である私にはさっぱり分かりません。少なくとも言えるのは、風の流れはいろいろな要素に左右されるため、非常に複雑であるということです。
もちろんこれは一例ではありますが、少なくともこうなる可能性もあると考える必要がありそうです。
下で強い臭気を感じる
住宅地ですので、下に流れた煙の先々には家や道路があります。
実際に私もその家の近くの道路を通ることがありますが、下の方ではっきり強い臭いがします。周囲には他に薪ストーブもありません。下から煙も目視できますし、その家からの臭気ということは確実です。
つまりこの例では、下の住民に迷惑をかけている可能性があると考えられます。
でも、まさか上から来ているとは気づいていない人もいそう……
もちろん横にも煙は流れる
この家は最も高い土地にある家ですが、周辺に同じ高さに位置する他の家もあります。日によってはそちらの方にも煙が流れることもあり、他にも迷惑をかけている可能性があるわけです。
その日の風向き次第で、住宅地であればどこに煙が飛んでいくかは予測不要です。
つまり住宅地に薪ストーブを設置する時点で、だれかに迷惑をかけてしまう可能性は常にあるわけです。
高台=薪ストーブ利用可能、とは言えない理由
すでに結論は出ていると思いますが、まとめたいと思います。
煙は下にも流れる可能性がある
煙は昇るもの……という思い込みを持っている方もいるかもしれません。しかしながらそれは常にそうとは限りません。
実際には煙が降下する現象もあります。ダウンドラフト・ダウンウォッシュなどの用語として、以下ページでも記載しています。
ドラフトは大事ですが、地域の気流により、どうにもならないこともあるかもしれません。
周囲に煤じんが落ちている可能性
薪ストーブの煙突からは、わずかな煤じんが発生します。下で臭気を感じるということは、煤じんも落ちてきていると考えるのが自然です。
とは言え実際には、目視できるようなサイズの煤じんとはなりません。それでもちりも積もればで、溜まれば以下の様な細かい点のようなものとして目視できるようになります。
ベランダの手すりや、サッシの隙間、給気口などに黒い汚れとして溜まり、周囲に迷惑をかける可能性があります。
風の流れは予測が難しい
風の流れは単純ではありません、近隣の地形や建物などにより影響を受けます。ですから、事前に予測するのが非常に難しいと考えられます。
今回ご紹介したケースでのように、下に巻き込まれる気流が発生することを設置前に分かるか……と言えば、分からないでしょう。
その土地の風の流れは、地元に習熟していても判断は難しいはず。それに地表では無く、屋根の上の風の流れなど、設置してみないと分からないと思います。
同じ高さの他の家に迷惑をかけることも
最も高い位置にある家が1軒だけ。他に全くない……など、住宅地においてそうそうないことだと思います。ですから、同じ高さに家があるケースの方が多いと思います。
ただでさえ下の方にも臭気が届くケースがあるのですから、同じ高さに家があればどうでしょうか。言うまでもないことです。
例え高台でも、同じ高さにある他の家に迷惑をかけてしまう可能性があります。
まとめ
以上、高台の土地でも薪ストーブ設置で迷惑をかける可能性があることを解説しました。それを知った上で設置するのはさておき、知らずに設置して後悔した……というケースを減らせたら幸いです。
私はそもそも論として、住宅地に薪ストーブを設置すること自体が問題と考えています。
住宅地では呼吸器疾患を持つ人や、身体の弱い人、赤ちゃんなど、多くの人が住んでいます。薪ストーブの煙はゼロにできませんし、避けることもできません。
迷惑を気にかけるのであれば、人がいないところで設置した方が自分も幸せになれます。
どうしても住宅地でという場合は「すすとり君Home」で煙自体を減らすことも有効と考えられます。ただ、それでも煙がゼロになるわけではないことはご留意ください。
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