徹底的に薪ストーブについて調べる
とにもかくにも、被害をどうにかしたい。しかし煙突は我が家よりもやや上なのに臭ってきているのはなぜ!?という不思議もあります。
状況を正しく分析するためには、まずは対象を知ることが大事です。薪ストーブや煙・臭いの流れについて知る必要性を感じました。
加えて、利用者がどういう気持ちで使っているのかや、正しく使った場合のメリットも知る必要があると考えました。
職業がコンサルなもので、仕事の際は徹底的に相手や競合、その業界を調査する……。そんな職業病も影響しているのかもしれません。
多かれ少なかれ煙や臭いがでるもの
まず最初に調べたのは、なぜ臭いが生じるのかです。
徹底的に調査した結果分かったことは、薪ストーブは多かれ少なかれ煙や臭いが出るものだということ。
そりゃあよく考えれば、木を燃やすのですからね。常に100%無煙・無臭にできないのは当然と言えるかもしれません。
庫内が高温になり二次燃焼機能が働けば煙は出なくなり、有害物質の放出も無くなります。しかし焚き付け時(使用開始時)はどうしても庫内の温度はすぐには上がりません。
そのため一定時間は完全燃焼せずに煙が出ます。
庫内が高温になり巡航運転すれば(適切な薪を燃やしている限り)目に見える煙はほぼ出ません。もし目に見えたとしても水蒸気がほとんどとなります。
また、新たに薪を追加するときにも煙は出やすいとのこと。1日の間に、何度か一時的に臭いが強くなるのはそのためかもしれません。
正しく使えば煙はでません。クレームも出ません。
確かに高温で燃えていれば煙が見えない状態にはなります。ですが焚き付け時も含めると、やはり煙や臭いは出るもの。クレームを言うまでではなくとも我慢している人はいるでしょう。
煙や臭い問題は総合的に決まるもの
煙は完全燃焼に近づくほど、目に見えずに臭いも少なくなります。逆に不完全燃焼に近づくほど、目視で確認できる強い臭いとなる。
不完全燃焼の臭いが直に来ると、もう公害と言っても過言ではない刺激臭です。
その煙や臭いの強さ・被害がどうやって決まるか。その要素がかなり多くて驚きました。
5つに分けましたが、それぞれが非常に奥深いです。これらが総合的に組み合わさって煙・臭い問題に繋がります。
煙と臭い発生にはたくさんの要素があり、減らすには相応の努力が必要
薪ストーブ設置の際は、とにかく煙突の高さが相談の話題に上ります。
煙が強く出てしまっても、煙突が他の屋根より高く設置されていれば上に行くから問題無いんでしょ!?
私もそう思っていました。「煙は上に昇るもの」という暗黙の考えがあったからです。
実際には、煙の上昇する力の強さに加え、風や近隣の建物の影響を受けるのでもっと複雑なものです。
煙が煙突から出てすぐに降りてしまうこともありますし、ご近所の屋根上まで斜めに流れてから建物に沿って下りてしまうこともあります。
つまり、住宅街での薪ストーブは、煙突が高く設置されていることは最低条件の話。それ以外にもたくさんの要素があります。
煙・臭いを減らすには、様々なことについて学び、試行錯誤しないと難しいでしょう。つまり(被害者ではなく)利用者の熱意や努力が必要です。
うまく使うには学習と試行錯誤が必要で、思ったより手強く難しい暖房器具だったんですね。
利用者の薪ストーブ愛・学ぶ意欲・熱意は様々
私は被害を受けた側でしたので、煙や臭いを意欲的に学びました(それ自体変わり者かもしれませんが)。しかし、利用者の誰もがそうとは限りません。
そもそも利用する人の薪ストーブ愛には、様々な温度感があります。
薪ストーブ大好きで、知識も豊富で臭いにも気をつけてます。
住宅会社で知って、炎のゆらぎやインテリア性が気に入って導入しました。
暖房器具としてとても暖かいそうなので導入しました。
薪ストーブ愛や学ぶ意欲の高い人は、適切に使われている方が多いでしょう。しかし、そこまでの気持ちが無い人もいます。
愛や学ぶ意欲など無くても、ぽつんと一軒家や田舎の広い土地で利用する分には問題にならないかもしれません。
しかし敷地境界から50cmそこらしか離れていないような住宅密集地では厳しくなってくるのは明白です。
都会や住宅密集地にはハードルの高い暖房器具
これらを総合的に考えてみると、薪ストーブという暖房器具は一定のハードルがある暖房器具だと言えそうです。
田舎等の広い土地での利用であればハードルは非常に低くなりますが、都会や住宅密集地に設置するにつれ、ハードルがぐんと上がるもの。
そういった事実を知らずに住宅街に導入してしまうと、トラブルに発展してしまうか、まわりが我慢することにも繋がります。
そうなると不幸ですよね。
その上非常にセンシティブな問題になり得る
また、私も被害に遭う中でいろいろ調べて解決法を模索しました。
しかしネット上ではうまい解決方法や折衷案等は見つけられず。何の解決にもならない感情的な言い合いも多かったです。
住宅街での薪ストーブは止めるべき。
いやいや、使う権利ありますし。
人に迷惑をかけていいのか。
こっちだって気を使ってますし高性能なものを使ってます。あなたが神経質なんじゃ。
どちらの言い分もある内容だからこそ、感情的になり、言い合いになってしまうのでしょう。
センシティブな問題につき、解決するのが大変なのだと認識しました。
メディアや販売会社、注文住宅会社はいいことばかり
そもそも、各種メディアや販売会社・注文住宅会社は薪ストーブを総じて良い物として紹介しています。これも情報が偏る要因になりそうです。
たしかに適した地域・土地に正しく設置し、正しい知識で使えばそうかもしれません。しかし実際には、デメリットを含めた情報が正しく伝わっていないように思います。
メディアを見ればメリットばかり
例えば雑誌やテレビなどでの薪ストーブ特集があったとします。これらでは、必ずそのメリットがメインコンテンツになります。
薪ストーブに限らず、メディアの役割とは大抵そういうものです。特集を組むためにはメーカー協賛だったり、そもそも広告だったりで、利害関係があるケースもありますしね。
そんな中、薪ストーバーさんのサイトでは、メリットだけではない豊富な情報が書かれていることもあります。私も非常に参考にさせていただいたサイトがありました。
それでも愛好家さんという立場からの情報ですので、読んでいて楽しいコンテンツがメインになることは必然です(悪い意味では無く)。
住宅会社は薪ストーブを良い物として扱う
薪ストーブを設置するタイミングとして、比較的多いのは新築時ではないでしょうか。さらに付け加えると、その建物を建てるのはほとんどが注文住宅会社だと思います。
注文住宅会社は、とにかくおしゃれさや夢、憧れなどで訴求してきます。
薪ストーブはそれらを訴求する上での優秀な営業ツールの一つなのでしょう。特に寒い地域でも無く、田舎でもない地域であったとしてもです。
そのため薪ストーブを売りにする会社では、とにかく薪ストーブを良い物として扱います。
「おしゃれですよね。しかもあったかくていいですよ」等と言いつつも、本当にその人が自宅で使っているか。そして理解があるかは別でしょう。
エコや自然、裕福さ等に繋がる、一つの営業ツールとしては都合が良いのかもしれません。
販売会社は「正しく使えば大丈夫」と言う
薪ストーブを検討する場合、メーカーや販売店・代理店のWebサイトを見たり、ショールームに行ったりすることになります。
そもそも販売会社は薪ストーブを売るのが仕事です。良心的な会社はデメリットをきちんと説明しますが、問題なのは売れれば良いという会社。
薪ストーブ業界に限りませんが、こういった会社はどの業界でも存在するものです。
東京都内の住宅密集地で設置できますか?
できます。弊社では高機能な製品を扱ってますのでクレームもこれまでほとんどありません。
こんな営業されたらどうでしょうか。でも、さすがに嘘までつく業者はまずいないと思うんですよ。
実際都内の住宅密集地でも、建築基準法や消防法に基づいていれば設置はできます。
二次燃焼の高性能な薪ストーブなら、うまく使えば煙も臭いも少ないのも事実。
「ほとんど」の定義は人それぞれですが、クレームも本当に数えるくらいしか出た (報告を受けた) ことがないのかもしれません。
ですが販売側が、利用者の受けるクレームの実数を完全に把握することはできません。
それに住宅密集地では、複数の我慢・不満が存在しているかもしれません。それこそ1件のクレームの裏には隠れた我慢・不満がもっとあるかもしれないのです。
それらのデメリットを説明せず、契約に有利な方向に案内されたら誤解が生じるのは必然です。
もちろん真っ当な会社はたくさんあるでしょう。ですが会社は営利を追求する立場にあるので、どうしても多少の「営業トーク」はつきものです。
住宅の設備・修繕工事関連は契約単価が高いので、昔からきわどい営業をする会社が一部あります。
ネット上の情報は、前提となる環境が様々なので時に誤解を生む
ネット上にはたくさんの薪ストーブに関する情報があります。しかしそれらの情報は、各人の様々な環境の上に成り立つ情報なこともあります。
情報発信側の前提となる環境が違えば、アウトプットされる情報が異なっても不思議ではありません。
このことも薪ストーブの誤解を生む要因の一つと思いました。
薪ストーブを利用する環境によって煙や臭いの影響が変わる
薪ストーブは、利用する環境によって周囲への煙や臭いの影響・感じ方が変わります。
一例を挙げれば、以下のような要素です。
- 地域(寒冷地・非寒冷地・都会・田舎)
- 住宅街/非住宅街での利用か
- 土地の広さ
- 立地条件(周辺の建物・道路など)
- 使用している機器の性能
これらが違えば、使い方や周囲への気を付け具合も変わってきます。トラブルになる割合も大きく変わるでしょう。しかしながら現実には、情報を得る側がそこまで汲み取るとは限りません。
情報の発信側の環境は様々
例えばある薪ストーブ設置業者のサイトを見ていると
「薪ストーブでクレームになることはめったにありません」
と書いてあるのを見かけました。最初は
あー、こういうこと言っちゃうんだ。売りたいだけなんだな。
と思いました。しかし、よくよく見てみると情報発信者の所在地は東北。おそらくかなり土地が広い場所での設置がメインなのではないか、とも思いました。
東北の広々した地域での利用では、状況が異なっても不思議ではありません。
つまりは悪気は無く、そのエリア周辺で設置のお仕事をしていると、実際そうなのかもしれません。東京の業者が同じ事を言っていたらどうかと思いますけれど。
他にも
等など、情報発信者の環境では問題無くとも、住宅街ではトラブルになりやすい方法が紹介されていることもあります。
ネット上では、様々な環境で薪ストーブを設置・利用する人が情報を発信しています。しかしその環境あってこそのアウトプット(情報)かもしれません。
ネット上の情報は、発信者の環境が違えば鵜呑みにできないことを認識しました。
さらに言えば、明文化されない利用者の技術レベルの違いもあるでしょうね。料理におけるレシピと同じで、行間の中にテクニックが隠れていることがあると思います。
見ている側の地域も様々
情報発信側の環境が様々と言いましたが、見ている側の地域・設置予定の環境も様々です。
ネットは当然全国どこからでも見られます。東京や九州から、北海道の発信者の情報をみているかもしれません。
前提となる環境が違う場所で配信された情報が、Google検索結果には一緒くたに出ます。
閲覧者は、情報発信者の利用環境をいちいち意識しないこともあるでしょう。流し読みをするときや、ファンでもないサイトの場合は特にです。
初心者の方なら、環境による違いがあることすら意識しないかもしれません。
自分の環境とは異なる情報発信者の「クレームは無い」等と言った情報を見て「意外と大丈夫なんだな」と思ってしまうこともありそうです。
これは誤解を生む要因となるのではないかと感じました。
せめて住宅街に設置する目線での情報サイトがあれば違うのかなと思いました。
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