住宅街での薪ストーブは、煙や臭い等の問題があります。この問題は利用者さんなら少なからずご存じだとは思います。
……が、自信を持って「理解している」と自負できる方はそういないのではないでしょうか。
それも当然の話で、自分で被害を経験しなければ、どれほどの問題なのか真に知ることはできないからだと思います。
実際に利用者・販売者による同類の記事もよく見ますが、現実と乖離があると感じることもめずらしくありません。時には全く分かってないということすらあります。

知識として知っているのと、自分が体験したのとでは違うこともありますからね。
私:ヤマダは、薪ストーブが多数設置されている場所に住んでいます。窓から煙突も4本よく見える位置にあるため、煙の出方を被害に遭いながら研究しています。よって薪ストーブの問題・痛みはとてもよく理解しているつもりです。
本ページでは、住宅街で薪ストーブを使うなら、あらかじめ知っておいていただきたい事をまとめました。特に、以下のような経験を持つ方にお読みいただければと思います。
- 一度もクレームは来たことがないので迷惑になってないのでは思っている
- クレームは来たけど、自分が悪いのか相手が神経質なのか分からず困っている
- ついクレームをぞんざいに対応してしまったけど客観的な意見も聞きたい
感情論で書かれた内容は信用してもらえませんので、できるだけ客観性を重視して書きました。
もしも何か1つでも得るものがありましたら、ご近所への対応に活かしていただければ幸いです。
煙・臭いについて

臭いは多かれ少なかれ発生しています
木を燃やすのですから、いかに優れた薪ストーブ本体・煙突設計・薪の質・スキルがあろうとも煙はゼロにはできません。
全てが最高の条件であれば、焚き付け時や薪の追加時にしか目に見える煙は出ないこともあるでしょう。しかしながら、逆に言えば、それでも煙は出ます。
むしろ最高の条件でなければ、より多くの煙を出してしまうということです。
実際問題として、我が家の周辺の煙突を見れば、上手く使うことが難しいのは一目瞭然です。
いずれも焚きつけ時はかなりの煙を出しています。また、焚き付けに長時間かかる(長時間煙が出る)煙突もあれば、通常時(?)にもしょっちゅう黒煙を出している家もあります。
控えめに考えても「薪ストーブは煙が出るもの」という認識が必要と思います。
煙は下に降りていきます

煙が出ても、昇っていくから大丈夫でしょう?
ドラフトや熱による上昇気流があるのは、煙突から排出されてからわずかな時間だけです。冬の大気に冷やされ浮力を失えば、重力の影響で拡散しながら煙は降りていきます。
煙が降りるころには目に見えなくなっているのでわかりにくいですが、実際には臭いを保ったまま周辺に漂っているのです。詳しくは以下の記事もご覧ください。
周辺住宅には、24時間換気や隙間から煙が流入してしまいます

煙が降りても、冬場は窓を閉めるているから大丈夫でしょう?
現代の家は一定量の換気が義務づけられているため、基本的に24時間換気を搭載することが一般的です。その24時間換気からは常に外気を取り込むため、煙は簡単に室内に入り込みます。
現に外気を取り込む給気口に付けるフィルターは、とんでもない速さで真っ黒になるんですよ。もちろん薪ストーブだけが原因ではないのですが、黒い部分の臭いを嗅げば薪ストーブの臭いそのものなことが確認できます。


例え24時間換気が無い住宅であっても、家には外気が入り込む隙間が存在します。
新しい家でもハガキ5枚分(C値=5.0cm2/m2)程度が多いですから、古い家なら隙間はもっと多い。つまり煙も入り込んでしまうのです。
焚きつけ時の臭いは少なくとも1時間以上臭います

焚き付けは20~30分ですから大目に見てほしいです。
コミュニケーションが良好であれば、できる限り大目にみたいという気持ちがある方もいると思います。私も当初はそう思おうとしていました。
しかしながら、実際に煙・臭いが気になるのは20~30分では済まないのです。
建築基準法による定められている換気の性能は以下の通りです。
空気の入れ替わる量 | |
---|---|
30分 | 1/4 |
1時間 | 半分 |
2時間 | 全て |
つまり一度室内に空気が入り込むと、1時間しても煙(=臭い)は半分しか減らないわけです。その間家中を臭わせてしまっているとしたらどうでしょうか?
周辺住民が寛容になれない、気づきにくい理由も実際にあるのです。
詳しくは以下の記事もご覧ください。
早朝・夜間の利用でも迷惑を感じることがあります

そんなこともあろうかと、私は早朝・夜間に焚き付けを済ませるようにしています。
お心遣い、大変すばらしいと思います。こういった気遣いをされているだけでも、近隣に配慮されている方なのだと思います。
しかしながら現実として、焚き付けの臭いは1時間以上臭うことも相まり、早朝・夜間でも迷惑になってしまうことはあるのです。むしろ個人的にはこれが非常に辛さを感じています。
というのも以下の2つが理由です。
- 煙が気になって夜眠れない
- 煙で朝起こされる
煙で朝起こされるというのは、体験してみるとわかりますが本当にかなり嫌なものです。最初は火事かと思い飛び起きました。しかもこの煙は強制であり、避ける方法はないのです。
誤解のないように補足しますが、早朝・夜間に焚き付けするのが悪いと言っているわけではありません。早朝・夜間に焚き付ければ煙の問題が解決するわけではない、という意味です。
これに関しては以下記事もご覧ください。
クレームが無い=迷惑を感じていないわけではありません

クレームは無いので大丈夫だとは思うのですが……
特に持ち家同士のご近所関係は、誰しも良好な関係でいたいものです。一生近くで暮らすかもしれない相手ですからね。
ですから迷惑を感じていても、なかなかすぐにはクレーム(苦情)を言うことができません。
ではどうするかと言うと、仕方がないので可能な限り我慢をするのです。
我慢しきれなくなったころ、やっと重い腰を上げてクレームを付けるかもしれません。
限界を超えているほどの怒りもあるため、ついついキツい言い方をしてしまい話がこじれてしまう……こんなことも時には起こるでしょう。

クレームを伝える側にも問題なこともあると思います。しかし強い我慢が根底にあることは知っていただけると幸いです。
ですからクレームが無い=迷惑をかけていないということではないことをご理解ください。
こちらについては以下記事もご参照ください。
自分は気にならなくても人は違うかもしれません

そもそも自分は気にならないですし、むしろ良い香りだとおもうのですが……
薪ストーブを好きで利用されている方の中には、良い香りだと思われている方もいると思います。それ自体は本当にそうなのだと思いますし、それがおかしいとは全く思いません。
ただし、人は違う考えを持つ可能性については理解する必要があると思います。
例えるならタバコの煙とも似ているかもしれませんね。私も昔吸っていたので分かりますが、多くの喫煙者はタバコを良い香りだと言います。しかしタバコを止めると、こんなに臭かったのかと愕然とするものです。
薪ストーブの煙も、自分では気にならなくても他人には臭っていることがある。……ということを知っていただければ幸いです。
住宅街ならではの薪ストーブ事情について

住宅街には、いろいろな人が住んでいます
ぽつんと一軒家とは異なり、住宅街には多様な人が暮らし・生活を営んでいます。当然、以下の様に煙・臭いの許容も正反対な人が住んでいます。
- 野焼きなどで慣れており臭いの許容がある人
- 煙耐性が低く臭いの許容が少ない人

我が家の地域は野焼きもあるし2の人は少数派だと思う。我慢してほしい!
……というのは、お気持ちも分かりますが少し横暴なようにも思います。住宅街にはいろいろな体質・価値観を持つ人が住んでいるのが普通だからです。それも多様性の一つ。人間の個性です。
よく考えれば薪ストーブも多様性ですね。周りを見れば住宅街での設置は少数派なのが現実ですが、あえて選択したのも多様性だと思います。
ご自身の多様性を尊重すると同時に、隣人の多様性にも想いを巡らせてみていただければ幸いです。
住宅街には、いろいろな事情を持つ人が住んでいます
住宅街には、外からは分からない、いろいろな家庭の事情があるかもしれません。
- 喘息の持病がある方のいる家
- 小さなお子さん・あかちゃんがいる家
- 死の間際にいる高齢の親が住む家
あなたの愛する人が、もし辛そうにしていたらどうでしょうか。
例えタバコを吸って良い場所でも、隣に赤ちゃんがいると“知っていれば”吸わない心優しい人は世の中に多いことを私は知っています。
実際には相手の事情はなかなかわからないと思いますが、それはコミュニケーションで補えることです。後に取りあげますので、参考にしていただければ幸いです。
煙を少なくする工夫・配慮をお願いします
周辺住民は、どんなに煙で被害を受けていてもどうすることもできません。家ごと逃げるわけにもいかなければ、巨大な扇風機で煙を跳ね返すことも現実的には無理です。
これまでにも書いたとおり、薪ストーブはどうしても煙が出ます。そして特に焚きつけ時は強い煙も出やすいので、早朝・深夜に行っても煙自体が強ければ迷惑になります。

じゃあどうすればいいの!?
これに対処するには、使用を止める以外の選択肢においては煙の発生を可能な限り少なくすることです。
- プロにレクチャーを受ける
- 信頼性の高い薪を利用する
- 薪は乾燥させ水分を計測する
- 煙突を高くする・性能や設計が悪ければ交換する
- 二次燃焼ができない薪ストーブは買い換える
- 定期的にメンテナンスをする
これらは近隣住民にはできません。全ては利用者さんの努力にかかっているのです。
燃やし方だけでも大分変わるようですので、自己流の方は特にプロのレクチャーをお勧めします。

プロに習えばスキルは一生ものですしね!
住宅街ならではの配慮をお願いします
何度も繰り返しになり恐縮ですが、住宅街にはたくさんの人が暮らしています。であれば住宅街ならではの見合った配慮をした方が良いのは当然です。
先ほどの「煙を少なくする事」もそうですが、それ以外にも以下のようなものがあります。
- 晴れている日中は使用しない
- 近所に洗濯物が干されていたら使用しない
- 周囲に人が多くいる時間帯は使わない
- 焚き付けは短時間で済むように努力する
常に周りを気遣って使用することが住宅街では大事です。
この中で最も話題にされるのは洗濯物への配慮ではないでしょうか。例えば晴れている日中には使えば周囲の洗濯物に臭いを付けてしまいます。
こうなるとせっかく洗ったばかりなものが洗い直しになるだけでなく、周囲の怒りを買ってしまいますので気をつけましょう。
付随する迷惑となりやすい行為に注意しましょう
敷地の狭い住宅街では、薪関連でも迷惑になりやすい要素があります。特に以下のような項目は注意が必要です。
- 薪作りでエンジン式チェーンソーは使わない
- 電動式チェーンソーも充分音がするので時間に注意する
- 薪割りは音・振動(地響き)に配慮する
- 境界線間際に薪を置かない(虫・カビなど)
敷地が狭ければ、無理に薪は自分で作らず購入する。薪棚は考えて設置する等考慮されるのが良いと思います。
薪割り・チェーンソーに関しては以下もご覧ください。
近隣住民とのコミュニケーションについて

コミュニケーションは非常に大事です
薪ストーブはコミュニケーションが大事と言われますが、私も本当にそう思います。薪ストーブのことはもちろん、普段からの近隣に対する挨拶、笑顔、快活さはマイナスになることはありません。
むしろコミュニケーション不足により、周囲に極限まで我慢をため込ませてしまうことには注意が必要です。
自分の好きに使っている内、とんでもなく恨まれてしまうこともあるからです。
良好な関係を築くためには、普段からコミュニケーションをとること。できることなら仲良くなっておくことは非常に重要です。
迷惑を感じていないか聞いてみるのもOK
コミュニケーションに自信が無い方にお勧めするのが、迷惑を感じているかどうかを相手に聞いてみること。下手にコミュニケーションするよりも、ズバリ聞いてみるのが一番分かりやすいからです。
できれば、特に最初の数年は間をあけて聞いてあげてください。最初の1年目は気づかなくとも、後から気になる事もありますからね。

何度も聞くなど“やぶ蛇”行為じゃない!?
……と思われるかもしれませんが、そんなことはないと思います。臭っていればいずれは気づくことですので。
それに、何度も聞かれても悪く思う人はまずいないと思いますよ。丁寧な言葉で確認していれば、むしろ「しっかりされているな」と思う方も多いことでしょう。
うちの近所は神経質なのではないか!?と思ったら

特別神経質な人だから難癖付けられてる気がします。これくらい普通だと思うのですが……。
もちろん、そういったことはあるかもしれません。しかし、相手を神経質な人=悪者だと決めつけてしまうと、自分が正当化されておしまいです。
被害を受ける側だから分かりますが、誰でも臭えば気になるもの、煙にも敏感になるものです。いじめは、いじめられた側でないと被害の辛さがわからないように、薪ストーブも被害を受ける側でないと分からないことがあります。
実際のところはケースバイケースでしょうが、少なくとも相手を知ること。もっとコミュニケーションをとってみることをお勧めします。
まとめ
以上、住宅街で薪ストーブを利用する際に知っておいていただきたいことをまとめました。
最初にも述べたとおり、利用者や販売者による同類の記事をとは違う視点で書くことができたため、一つの意見として参考にしていただければと思います。
正直、住宅密集地での薪ストーブは不向きだと思いますし、広い土地で使った方が利用者としても幸せだと私は思います。
しかし時代の流れからして、今後もますます住宅街への設置が増えてくるのは間違いない。そう思ったからこそ記事を書く原動力になりました。
本記事が、日本の住宅街における薪ストーブの利用向上に、わずかでも貢献できれば幸いです。
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